2023 Fiscal Year Research-status Report
ツバメの巣のバイオミメティクスによる土塗り壁の再評価
Project/Area Number |
23K13444
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
高岩 裕也 東洋大学, 理工学部, 准教授 (90866790)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | バイオミメティクス / 土塗り壁 / 材料構成 / ツバメの巣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ツバメの巣から学び,土塗り壁の材料構成をバイオミメティクスの観点から再評価するものである. 先行研究では,ツバメの巣に関する研究はツバメが巣に回帰する確率や,巣の形状,土壌についておこなわれており,材料特性に関してはツバメの巣の唾液に注目した研究により,ツバメの唾液に含まれるムチンが土の粒子間に粘着力を持たせるということが明らかになっている.しかしながら,ツバメの巣の材料特性に関する研究は極めて少ないのが現状であり,土とスサを用いてどのように合理的な巣を構築しているのかは明らかになっていない. そこで,研究の端緒として,ツバメの巣の採取をおこない,X線CTによる内部構造の観察,巣を分解し繊維質量含有率,繊維材の長さ・直径,土の粒度分布を明らかにした.まず,ツバメの巣のX線CT画像によって,ツバメの巣は団子状の泥を積み重ねるようにして構成されており,スサが団子状の泥を横断し,繋ぎ止めるような構造をしていることが確認された.またスサの配向は多くが水平の向きに巣の中心を囲うように配置されていた. ところで,土塗り壁の再評価をおこなうためには,左官職人が経験的に構築する土塗り壁の材料構成や材料特性について把握を行う必要がある.そこで,既存建築物の解体現場から土塗り壁のサンプルを採取した.解体の前に,土塗り壁を主耐力要素とする既存建築物を対象とした加力試験,振動測定を行い,土塗り壁を有する既存建築物の構造性能についても検討をおこなった.加えて,ツバメの巣の積み重ねて巣を構築する技術に類似する土を用いた伝統的な工法である版築についても,土塗り壁と同様の分析をおこない,試験体高さ方向において強度異方性が生じることを示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書で記した研究スケジュールの2023年度実施予定の内容(試験材料の調達,改修工事現場からの壁土サンプルの入手,ツバメの巣の採取,寸法・形状調査,X線CT撮影)は全て完了している.その中で,解体現場において,実在する土塗り壁を有する建築物の構造性能に関する研究を追加で実施したため,得られた知見を,最終的な成果をとりまとめる際に活用する予定である.加えて,2024年度前期に予定していたツバメの巣の粒度分布測定を既に完了しているため,当初の計画に追加して,サンプル数を増やして分析を行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書で記した研究スケジュールに基づいて,2024年度前期に知見①(ツバメの巣の材料構成)について原著論文としてまとめて投稿する予定である.また,2024年度にはサンプル数を増やすことで,研究の再現性を高めていく.今後,その結果を踏まえた一軸圧縮試験体を作製し,載荷実験をおこなうことで応力-ひずみ関係を得る予定である.次年度は,そこから土塗り壁の構造性能に影響を与える圧縮強度,弾性率,靭性値の3つを明らかにする予定である.
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Causes of Carryover |
予定通り予算を使用したが,わずかに差引額に残額が生じた.
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