2023 Fiscal Year Research-status Report
The Spread of Tenement Houses with the 20th-Century Japanese Migration to Asia
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23K13489
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Research Institution | Kyoto University of Arts and Crafts |
Principal Investigator |
砂川 晴彦 京都美術工芸大学, 建築学部, 講師 (10965213)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Keywords | 長屋 / 町家と町並 / 大邱 / 那覇 / 居住形態 / 防火構造 / 表庇 / 日本植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は東アジアに進出した日本人の家屋建設によって形成した町並とその住形式の特徴を明らかにすることを目的としている。とくに表長屋の普及に注目している。 現存家屋の調査を実施した都市は大邱である。大邱の旧城内を中心に町並を構成する遺構の把握を試みた。とくに南城路、北城路沿いにまとまって残存する点で町並の分析上重要な家屋群を見出し、現地協力者を得て構造・平面形式の実測・聞き取り調査を実施した。遺構調査から表長屋が町並を構成する住形式の一つになっていることを裏付けることができた。家屋は2階に床の間の付く畳敷きの室があり、2階居住を基本としていて、通り沿いの家屋は表庇(1尺余り)を共通にもつ。長屋の各戸両側の戸境を煉瓦積みの側壁とし、この壁に木造の小屋組を架ける構造形式に注目される。こうした構造は単体ではなく連なる長屋建ての形式の特性を活かして発達した形態と考えられる。この煉瓦を使用した戸境壁を立てる長屋建ては、韓国他都市の外観からも観察されその普及が指摘される。このように遺構調査から1920・30年代頃の長屋建て店舗併用住宅の構法的特徴の一端が見出された。 那覇では、日本人の進出が町並形成に与えた影響を検討した。その結果、那覇市街中心部の東町の大正大火が町並の転換点であり、大火以降に日本人の住形式の家屋が支配的になったことを視覚史料(古写真)によって確認した。反対に大正大火の以前において士族所有の屋敷内に接道した長屋が建てられ、街区表層に表長屋が並ぶという町並の形成が分かってきた。そして大火以降では旧士族の大土地所有者らが貸家経営に力を入れ、その借家の形式として長屋が一層に普及したと見立てることができた。琉球時代以来の石垣囲いの士族屋敷を基盤に転換していくところに那覇の町並形成の特徴があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
韓国の大邱では家屋内部の調査に際して所有者への交渉の協力者を得て、かつ段取りを慎重に行なったことでスムーズに現地での遺構調査と史料の収集を実施できた。また、韓国行政庁が刊行している日本統治時代の遺構の調査報告書やほかデジタルアーカイブを活用することで研究を推進できた。
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Strategy for Future Research Activity |
表長屋建て普及の解明に向けて、韓国の大邱は遺構数が多く研究の達成において有効な対象となっている。引き続き大邱にて遺構調査ならびに史料の収集に力を入れる。沖縄では長屋建てほか、町並の発達が観察される那覇の旧西町・東町を対象に土地建物の所有形態および居住形態の復元を進める。また中国沿岸部・台湾での検討に着手する。他方で、こうした家屋建設を規定する、建築法規ほか諸条件との関係性を検討することで都市間比較の考察を行いたい。
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Causes of Carryover |
2月に実施した海外調査(韓国)にて旅費、謝礼が膨らんでいたため、図書購入等に充てる予定であった物品費の使用を抑えた結果として生じた。研究遂行のためには海外での調査が必要なため今後とも旅費、謝礼の支出に注意して推進したい。
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