2023 Fiscal Year Research-status Report
原子分解能応力印加TEMその場観察を用いた粒界破壊の原子論的研究
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23K13538
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 隼 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00780777)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / 脆性破壊 / 粒界 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
セラミック材料における脆性破壊は実用上大きな問題となっており、特に多結晶体の結晶粒界に沿って亀裂が伝播することで破壊に至る粒界破壊は、材料の力学的信頼性に直結する重要な研究課題である。本研究では、透過電子顕微鏡(TEM)内で試料に応力を印加し、粒界が破壊する過程をナノスケール・原子スケールでその場観察することで、粒界破壊のメカニズムを明らかとし、粒界原子構造が粒界強度に与える影響について原子論的起源を探求した。 モデル材料には粒界破壊挙動を示す代表的な構造用セラミックスであるアルミナ(α-Al2O3)を用い、双結晶試料に対してTEMナノインデンテーション法用いて粒界直上に局所応力を印加したところ、粒界に沿って数百ナノメートル程度のき裂が導入されることを確認した。導入したき裂の清浄破面をSTEMにより原子分解能観察を行い、得られた破面の原子構造と破壊前の粒界原子構造を比較することで、原子スケールにおけるき裂進展パスを決定したところ、粒界の中心に位置する酸素レイヤーを伝って亀裂が伝播することが明らかとなった。 さらに、破面が電気的中性条件を満たすような種々の破壊パスに関して、へき開エネルギーを第一原理計算を用いて系統的に評価したところ、実験的に決定された破壊パスが最も安定であることが確認された。また、粒界破壊を引き起こした粒界原子構造を解明するため、亀裂進展パスの周囲の原子構造および結合を粒内と詳細に比較すると、粒界コアにおいてAl-O間の結合が粒内よりも減少していることが明らかとなった。従って、粒界コアにおける結合数の減少が粒界破壊を誘起していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度では、TEMナノインデンテーション法およびSTEMを用いてアルミナ粒界における粒界破壊過程を原子スケールで解析した。また、第一原理計算と組み合わせることで、本粒界において粒界破壊が誘起されるメカニズムを原子構造と関連付けて明らかにするに至った。これらの内容は研究計画におおむね沿ったものであり、初年度で確立した一連の手法は、別の原子構造を有する粒界に応用可能なものである。上記の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度で確立した解析手法を、他の方位関係を有する粒界に系統的に適用し、本年度に得られた知見と組み合わせることで粒界原子構造と粒界破壊現象の相関を評価する。さらに異種元素が偏析した粒界にも応用することで、異種元素添加が破壊強度に及ぼす影響について、そのメカニズムを原子スケールで明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主たる理由は下記の通りである。(1)研究の進捗状況を考慮して、国際学会における発表を行うための出張費用の支出を次年度とすることとした。(2)実施にあたって、本年度は実験に注力したため、シミュレーションに用いる設備導入を見送った。 次年度は、基本的に研究計画に沿って実験機器利用料、実験消耗品、論文投稿料、国内・外国旅費等として支出する計画である。また、次年度の使用においては計画以上の研究推進を目指して、実験試料を充実させることで効果的に使用する予定である。
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