2023 Fiscal Year Research-status Report
リン酸カルシウムの骨再生能強化と生体用高分子の吸収性制御を両立した複合材料の開発
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23K13555
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
濱井 瞭 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00824004)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リン酸八カルシウム / リン酸カルシウム微粒子 / 結晶性 / 化学環境調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では, 無機粒子を修飾した生体用合成高分子により,共存するリン酸八カルシウム(OCP)周囲の化学環境を調節することで,これら材料間で生じる相互の加水分解の速度を調節し,OCP/生体用高分子複合材料の骨伝導性と生体吸収性の強化の可能性を検討することを目的とする。本年度は,生体用合成高分子に修飾するリン酸カルシウム微粒子を合成し,その組成と結晶性がOCPの加水分解に及ぼす影響を検討した。 非晶質のリン酸カルシウムを水溶液中で合成し,更に,これを用いて結晶性の異なる微粒子を調製した。また,OCPの加水分解促進因子であるフッ化物イオンを含有させた結晶性の異なるリン酸カルシウム微粒子も作製した。X線回折や透過型電子顕微鏡観察下の制限視野電子回折により,フッ化物イオンの添加の有無によらず合成された微粒子が非晶質であることが確認された。これら微粒子の水溶液中での処理条件に応じ,リン酸カルシウムの結晶性が変化する傾向にあった。また,フッ化物イオン選択性電極を用い,結晶化前後の微粒子中のフッ化物イオン量を測定した。その結果,結晶化の処理前後によらず微粒子に添加したフッ化物イオンが微粒子中に含有されていることが示された。 生理的環境を模倣した溶液中において,OCPとリン酸カルシウム微粒子を非接触状態で共存させ,OCPの加水分解挙動を評価した。溶液浸漬前後のOCPの化学構造を分析した結果,共存するリン酸カルシウム微粒子の結晶性および組成によりOCPの加水分解速度が調節される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
無機イオン供給源となるリン酸カルシウム微粒子の合成において,導入した微量のフッ化物イオンの含有量の測定方法の検討に想定以上に時間を要し,合成高分子へのリン酸カルシウム微粒子の修飾や,複合材料の分解挙動等の解析に至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
生体用合成高分子へのリン酸カルシウム微粒子の修飾プロセスを検討するとともに,その高分子とOCPの複合体の生理的環境下における溶解・分解挙動の評価を計画している。さらに,リン酸カルシウム微粒子を修飾した高分子とOCP共存下での細胞応答性の解析も予定している。
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Causes of Carryover |
今年度に計画していた,合成高分子へのリン酸カルシウム微粒子修飾や,修飾後の高分子とOCPの複合材料の溶解・分解の解析に至らなかった。それら実験での使用を予定していた試薬等の購入費用や共通設備の機器使用料の支出が減少したため,次年度使用額が生じた。
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