2023 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of low-friction coatings containing layered metal-organic frameworks
Project/Area Number |
23K13558
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
江口 裕 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50866572)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 金属-有機構造体 / 摩擦 / 固体潤滑 / トライボロジー / 配位高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では金属-有機構造体(MOF)の構造設計に基づき、摩擦によるエネルギーロスを低減することが可能な固体潤滑剤の開発と、そのコーティング膜としての応用について検討を行う。2023年度の実施内容としては、はじめに銅とテレフタル酸からなる二次元状MOF(CuBDC)を合成し、その粉体試料を担持した試験片をボールオンディスク摩擦摩耗試験により評価した。その結果、CuBDCが試験条件下でグラファイトやPTFEといった既存の固体潤滑剤と同程度の固体潤滑性を発現することを明らかにした。また、その摩耗面の表面構造を電子顕微鏡により評価したところ、CuBDC担持試料の摩耗面はグラファイト担持試料の摩耗面と類似した表面状態であった。このことから、CuBDCがグラファイトと同様の潤滑メカニズムによって低摩擦性を発現していることが示唆された。次に、CuBDCと類似した化学的性質を有しながら、異なる結晶構造を有する配位化合物を合成し、その固体潤滑特性をCuBDCと比較した。配位子として安息香酸と1,3,5-ベンゼントリカルボン酸を用いて配位化合物を合成し(それぞれCuBMC, CuBTC)、それらを担持した試料の摩擦摩耗試験を行った。その結果、摩擦係数の値はCuBTC > CuBMC > CuBDCとなり、CuBDCが形成する二次元状の結晶構造が固体潤滑性の発現に関与していることが示唆された。 二次元MOFの固体潤滑特性に関して得られたこれらの基礎的な知見は、次年度の材料設計を進める上で非常に有効と思われ、高機能なコーティング膜の作製につながると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二次元MOFとして当初設計したCuBDCにおいて初期の試験として良好な結果が得られ、その潤滑メカニズムについても類似化合物との比較や種々の表面観察の結果から有意義な知見を得ることができ、近日中に学術論文を投稿できる段階まで研究が進展していると考えている。当初の研究計画(CuBDCへの中性配位子の導入など)を一部修正した点もあるが、次年度実施予定の内容(他の二次元配位高分子への展開)を先行して進められている部分もあり、研究全体としては順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
CuBDCを基本構造とした際に、金属種や配位子構造の違いが固体潤滑特性に与える影響を検討するとともに、高分子との複合化によるコーティング膜の評価も実施する。さらに、二次元構造を有する金属有機構造体の潤滑特性に関する一般性を検証するため、例えば金属チオラートなどの他の構造体についても研究を展開する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、有償の分析装置の使用機会が想定よりもやや少なかったためである。次年度は研究最終年度となるため、得られた成果を広く発表し研究内容についての議論を深めるため、学会参加費用として活用していく予定である。
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