2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating the mechanism of hydrogen entry into metals under corrosive environment using an ultrasensitive hydrogen visualization system
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23K13570
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柿沼 洋 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80974419)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 腐食防食 / 水素脆化 / 水素侵入 / 水素可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
導電性高分子を主要な構成材料とする水素センサーを用いて、金属の溶解挙動と水素分布を同時に観察可能な超高感度水素可視化システムを開発し、NaCl液滴下におけるFe板の腐食と腐食に伴う水素侵入挙動の同時観察に成功した。腐食の初期過程で発生する方位性ピットはpH 4以上のNaCl水溶液中で発生するため、水素侵入をほとんど促進しないことが分かった。腐食が進行すると島状さびが形成され、さび層下でpHと電位が低下することで水素侵入が急激に促進されることを明らかにした。また、乾燥により液滴が消失すると水素侵入は緩やかになるが、水分を含むさび層下では局所的に水素侵入が生じることが水素可視化試験により明らかになった。このとき、厚いさび層はNaCl水溶液の含有量が多いため、乾燥過程で塩化物イオン濃度が高くなり、腐食と水素侵入が促進されやすくなることが示唆された。 超高感度水素可視化システムを開発し、腐食挙動と水素侵入挙動をリアルタイム観察することで、大気腐食環境においては液滴が消失後もさび層下で継続的に水素侵入が生じることがわかった。これは、液滴が消失後も濃厚化したNaCl水溶液がさび層下に存在しているためであり、大気中の湿度によってさび層下の水素侵入挙動は変化することを示唆している。そこで、高湿環境でも使用可能な対候性に優れる水素センサーの開発を行った。従来の水素センサーに透明な樹脂コーティングを施すことで、水素センサーとしての性能を損なわずに対候性を付与することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載していた、令和5年度の重点課題であった導電性高分子を主要な構成材料とする水素センサーを用いた金属の溶解挙動と水素分布を同時に観察可能な超高感度水素可視化システムの開発に成功した。開発した水素可視化システムを用いて、NaCl液滴下におけるFe板の腐食と腐食に伴う水素侵入挙動の同時観察を行い、水素侵入に及ぼす電位やpHなどの環境因子とさび層厚さの影響を明らかにした。さらに、液滴の乾燥過程における水素侵入にはさび層に含まれる水分量が重要であるとの新知見が得られたため、水素侵入に及ぼす湿度の影響解析を目的として高湿環境でも使用可能な水素センサーを開発した。従来の水素センサーに透明な樹脂コーティングを施すことで、水素センサーに対候性を付与することに成功した。新規開発した水素センサーにより、高湿環境における水素侵入挙動の可視化が可能になり、当初の計画では解析が困難とされていた、乾湿繰り返し環境における水素侵入挙動も解析できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
液滴が乾燥後の水素侵入挙動の解析を重点的に行う。令和5年度の成果から、液滴が乾燥後もさび層下では局所的に水素侵入が生じることが明らかになった。さび層下の水素侵入には、さび層に含まれるNaCl濃度や水分量、さび組成などが重要であることが示唆された。そこで、令和5年度に新規開発した高対候性を有する水素センサーを用いて、高湿環境における水素侵入挙動の可視化を行い、液滴が乾燥後の水素侵入に及ぼす湿度や塩化物イオン濃度などの影響を解析する。さらに、鉄鋼材料に侵入した水素の拡散挙動の微視的解析を行い、水素拡散と金属組織の関係を明らかにする。
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Research Products
(9 results)