2023 Fiscal Year Research-status Report
内部水冷式ツールを用いた摩擦攪拌接合における温度分布および材料流動挙動の研究
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23K13576
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三浦 拓也 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (60781466)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 摩擦攪拌接合 / 水冷ツール / 鉄鋼材料 / 温度分布 / 接合温度 / 材料流動 / 集合組織 / 微細組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、内部水冷式ツールを用いる摩擦攪拌接合(FSW)における、接合中のツール温度が被接合材よりも低く保たれるという従来のFSWでは実現困難な温度分布のもとでの材料流動挙動を調査し、従来のFSWにおける材料流動との相違点と共通点を明らかにすることでFSWの材料挙動における普遍的な現象を明らかにすることを目的としている。 2023年度は接合および接合部の微細組織評価が容易な炭素鋼を対象として、工具鋼製の内部水冷式ツールによるFSWを実施し、熱画像カメラ等による温度評価、接合部の微細組織および硬度分布評価による温度分布と材料流動挙動の評価を実施し、従来のFSWとの相違点を明らかにした。 熱画像カメラを用いたツールの温度測定により、内部水冷によって鉄鋼材料のFSW中のツールの温度が300℃から400℃程度低減され、材料への入熱量も低減されることが明らかとなった。一方、従来のFSWでは、接合速度を低減すると接合温度が向上し、接合部の組織が粗大化する傾向が見られるが、内部水冷式ツールを使用した場合は、反対に、接合速度が低い方が接合温度が低くなり接合部の組織がより微細となる傾向があることが明らかとなった。 また、従来のFSWと同様に攪拌部内に材料流動方向に沿って分布するせん断集合組織をEBSDによって解析し、内部水冷式ツールを用いた場合も従来のFSWと同様にツールの回転に沿って被接合材が同心円状に流動していることが明らかとなった。 また、有限要素解析によりツールが極端に冷却されている場合においてもツール表面で十分な発熱があれば従来と同様の温度場が被接合材に形成されることを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、炭素鋼のFSWにおいて内部水冷式ツールによるFSWを実施し、接合中の温度分布や材料流動挙動に関する従来のFSWとの相違点と共通点を明らかにすることを予定しており、実際に接合中のツール温度の低下や入熱量の低減を明らかにするとともに、接合速度が接合温度に与える影響が反転していることや従来のFSWと同様の材料流動挙動が生じていることなどを明らかにすることができており、進捗状況については「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度については、現在使用していた装置に不具合が生じ実験が中断しているため、装置の修繕を実施する。並行して、ツールの内部水冷機構の見直しを行うことで実験可能な装置の制約を緩和することを試みる。具体的には、水冷機構を備えたツールホルダーの設計を行う。 また、内部水冷式のツール形状の最適化を図り。現状のツール形状では、ボビンツールの上下ショルダー間に材料が凝着することで使用が困難となることが課題であり、ショルダー縁部曲率半径の増大および、ツール材質の変更によってこの課題を解決し、接合可能条件範囲を広げることで、より広範囲の温度分布および流動挙動での実験を実施し、より普遍的な現象を明らかにする。 また、当初の計画通り、ステンレス鋼板などの炭素鋼以外の材料での実験および、レーザ加熱や液体CO2冷却といった外部の熱源、冷却源を併用した実験を実施することでより普遍的な現象の解明に取り組む。 得られたFSW中の普遍的な現象に対する知見を踏まえ、従来用いられている入熱量のモデルの改良や有限要素解析による温度分布の推測の精度の向上等に貢献することを目指す。 加えて、本年度は本研究課題の最終年度であり、得られた成果を学術論文、国際会議、学術講演会等において積極的に公開し、研究成果の広範な社会還元に努める。
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