2023 Fiscal Year Research-status Report
凝固その場観察による金属間化合物の偏析過程の解明とアルミニウムリサイクルへの応用
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23K13585
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
志賀 敬次 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (30803150)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 凝固 / 結晶成長 / アルミニウム / 偏析 / その場観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属スクラップから有用な金属を精製する技術の開発は、低環境負荷社会の実現に向けた重要な取り組みである。本研究は、合金の凝固時に溶湯に流動を付与すると試料の外周部分に金属間化合物が高密度に形成する現象(偏析)に着目し、凝固偏析を活用したアルミニウムスクラップ溶湯の精製技術の開発を目的とする。電磁撹拌下における金属間化合物の偏析過程ついては不明な点が多いため、アルミニウム合金溶湯の凝固過程を白色光とX線イメージングにより可視化する装置を開発した。観察炉に導入する雰囲気ガスの露点制御により、アルミニウム合金溶湯の表面酸化を抑制した。これにより、溶湯表面における凝固の光学観察を可能にし、金属間化合物の晶出と成長過程を明らかにした。また、電磁撹拌凝固過程におけるAl-Si合金中の鉄系金属間化合物の成長をX線イメージングにより観察した。流動付与によりるつぼの壁面からの金属間化合物の晶出・成長が促進されることが分かり、金属間化合物がるつぼ壁面に分離・偏在する偏析過程を明らかにした。この結果は、電磁撹拌による金属間化合物のマクロ偏析が、従来考えられていた電磁・遠心分離メカニズムではなく、溶湯の流動に起因する溶質補給により外周部での金属間化合物の成長速度が増大することに起因することを示す興味深い結果であった。精製技術開発の研究では、アルミニウムスクラップ合金溶湯へのマンガン添加が鉄系金属間化合物の分離に有効であることを示した。熱力学計算により、マンガン添加量の増大に伴い鉄系金属間化合物の晶出温度が増大するため、電磁分離効率が上昇することを理論的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現有装置の改良により、アルミニウム合金の凝固過程を光学観察できる装置を開発した。その場観察炉に導入するアルゴンガスの露点制御により、アルミニウム合金溶湯の表面の酸化を低減でき、清浄面が得られた結果、長作動距離のズームレンズを使用してアルミニウム溶湯表面の観察が可能になった。凝固時の固液界面の位置の識別により、金属間化合物の晶出と成長過程を可視化した。また、過共晶Al-Si合金中の初晶シリコンの成長、Al-Si共晶組織の形成と成長界面を観察した。この結果、ストロンチウム添加が共晶凝固界面に顕著な影響を及ぼす現象の可視化に成功した。 Al-Si合金の凝固X線イメージング装置を開発し、電磁撹拌印加下における鉄系金属間化合物の成長をその場観察した。これにより、流動付与がるつぼの壁面からの金属間化合物の晶出・成長を促進し、金属間化合物がるつぼ壁面に分離・偏在する結果、マクロ偏析が発達するメカニズムを明らかにした。 精製技術開発の研究では、アルミニウム合金へのマンガン添加が鉄系金属間化合物の分離効率に及ぼす影響を熱力学計算により調べた。マンガン添加量の増大にともない鉄系金属間化合物の晶出温度が上昇するため、金属間化合物の凝固時間が長くなる結果、高効率に分離できることを明らかにした。 当初の初年度の計画では、流動のない条件下での凝固その場観察装置の開発と実験を予定していた。しかしながら、想定よりも早く電磁撹拌下でのX線イメージング装置を製作することができ、その場観察実験を開始している。したがって、当初の計画以上に研究が進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に製作した光学その場観察装置に流動付与機構を導入する。流動付与の手段として、るつぼの回転または直流電磁場の印加を検討している。改良した観察装置を用いて、溶湯流動下でのアルミニウム合金の凝固その場観察実験を試みる。 X線イメージング実験については、透過撮影画像中のノイズの更なる低減、実効分解能の向上および撮影フレームレートの増大を行い、装置改良を進める。実験の内容については、凝固組織形成に及ぼす電磁撹拌条件の影響を詳細に調べる。具体的には、コイルに付与する電流周波数と正逆回転の反転時間の条件を細かく振り観察実験を行う。また、初晶の電磁分離理論を詳細に調べるため、観察試料にAl-Si過共晶合金を使用する実験も並行して行う予定である。 精製技術開発の研究では、マンガン以外の元素添加による鉄系金属間化合物の高効率分離が可能であるかを熱力学計算に基づいて考察する。また、電磁撹拌により偏在した鉄系金属間化合物を物理的に除去する予備実験を開始し、電磁撹拌を活用したアルミニウムの高効率精製が可能であるかを検証する。
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Causes of Carryover |
当初X線イメージング装置に用いる電磁撹拌装置を新規購入する予定であったが、電磁コイルの制御盤の納期が長く初年度内の納品・設置および電磁撹拌凝固実験の実施が難しい状況になった。また、制御盤は既存の装置で代用ができ新規購入の必要性が必ずしもないことが分かったため、購入を断念した。装置購入で計上していた費用は、その場観察実験に用いる水冷導入機構や精製技術開発における溶解装置の購入費に充てたが、当初予定していた使用額と差額が生じてしまった。次年度使用額に関しては、その場観察装置の改造費や試料るつぼの購入費等に充てる予定である。
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