2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K13656
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安井 勇気 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (00846636)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 走査型トンネル顕微鏡 / 水平力 / 摩擦 / 磁気交換力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子間力顕微鏡を基にした手法により、水平方向に働く磁気的相互作用を検出することを目標としている。この達成のため、2段階の研究を行った。 ナノメートルサイズの磁気構造を可視化する手法として、スピン偏極走査型トンネル顕微鏡が広く知られている。現在では、世界中で多くのグループがこの手法を用いた研究を行っている。ナノメートルサイズの磁気構造を可視化する他の手法として、磁気交換力顕微鏡と呼ばれるものがある。これは、原子間力顕微鏡を基にした顕微鏡法の一種で、磁化させた探針を用いることで、局所的な磁気相互作用を検出する方法である。磁気交換力顕微鏡を達成した最初の報告は2007年であるものの、その後約20年経つ今でも、その成功例は世界で数グループしか報告していない。本研究では、垂直方向に働く磁気交換力顕微鏡の開発を行った。そして、1ナノメートル以下の磁気構造の観察に成功し、この結果を複数の会議で報告した。 並行して、水平方向の力を検出する原子間力顕微鏡のセンサーの開発も行った。通常の原子間力顕微鏡では、カンチレバーを垂直方向に振動させることで垂直方向に働く力の検出を行う。一方で、水平方向の力を検出するためには、カンチレバーを水平方向に振動させる必要がある。そこで、水晶振動子を加工することで、垂直方向と水平方向の両方向に振動するカンチレバーを作製した。そして、このカンチレバーを用いて原子分解能を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、水平方向の磁気相互作用の検出を目標としている。この達成には2つの要素が必要となる。①原子間力顕微鏡により磁気相互作用を検出すること。②水平方向の力を検出するためのカンチレバーの開発。初年度には、これらそれぞれの要素を達成することができた。 ① 原子間力顕微鏡による磁気相互作用の検出。イリジウム基板上に鉄を蒸着することにより、一次元状の鉄鎖を試料として作製した。この試料に対して液体ヘリウム温度で動作する顕微鏡観察を行った。蒸着した鉄原子を探針で拾い上げることで、磁化した探針を用意した。この探針を用いて、磁場下において走査型トンネル顕微鏡および原子間力顕微鏡を用いた測定を行い、磁気構造に相当するシグナルの検出に成功した。 ② 水平方向の力を検出するためのカンチレバーの開発。普及している原子間力顕微鏡では、試料に対して垂直方向にカンチレバーを振動させることで、試料に垂直方向の力を検出する。そのため、垂直方向の力検出用のカンチレバーは市販品として購入することができる。一方で、水平方向の振動をするカンチレバーは普及しておらず、その作製を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度には、①原子間力顕微鏡により磁気相互作用の検出、②水平方向の力を検出するためのカンチレバーの開発を行った。次年度にはこれら2つの要素を組み合わせ、水平方向の磁気相互作用の検出を目指す。 初年度の研究では、①と②を別の系を用いて行った。そこで、次年度には①で用いた系に対して、②で開発した手法を用いる。イリジウム基板上に鉄を蒸着することにより作製した試料を液体ヘリウム温度で動作する顕微鏡で観察を行う。水平方向に振動するセンサーに対しても磁化した探針を用意することで、水平方向に働く磁気的相互作用の検出を目指す。
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Causes of Carryover |
これまでは原子間力顕微鏡に用いるセンサーを外部から購入していたが、水平方向の力検出用センサーの開発により、自前で用意できるようになったため、差額が生じた。次年度に、センサー開発に必要な材料の購入に充てる。
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