2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K13691
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
佐藤 志彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉環境国際共同研究センター, 研究職 (80785460)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 広島原爆 / 微粒子 / 放射光 / 黒い雨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題ではWannierらが2019年に報告した、広島湾の海岸砂から見つかった高温熔融過程を経て形成したと推定される1ミリメートルに満たない、正体不明の6種類の粒子について、福島第一原子力発電所事故で放出した放射性粒子の解明に用いた手法を適用することで、広島湾粒子の性状把握を行い、最も合理的な生成過程を示す。それにより本研究で対象とする微粒子が、広島原爆に由来するものか、あるいはその後の人類活動や地球・惑星科学的な事象で生じたものかを明らかにする。 本研究の目的は、6種類存在する広島湾粒子に対し、それぞれの素性を科学的に解明し、真の由来を特定することにある。そこで本研究では広島湾粒子が原爆炸裂時に生じたものかを推定する手段として、①77年前に堆積した地層から発見されるかという存在の時間軸、②長期間、環境中で保持され続けられるかという、粒子の持つ物性の時間軸、さらに③内包する放射性物質の同位体比という3つの観点から解明を行うものである。 本年度は実施初年度であったため、計画通り現地調査・試料採取を行い、さらに実験室に持ち帰った試料から粒子の分離を行い、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)で外観上の特徴を確認し、Wannierらが報告したものと同一の粒子を収集することに成功した。また一部試料に対し放射光実験を用い、X線蛍光分析(XRF)で内包する元素分析、X線回折(XRD)で結晶性の評価、X線CT撮影(XRT)で内部構造を観察した。なお本年度取り扱った試料の中にウラン等の核分裂に起因する元素は優位な濃度で含まれていないことを確認したため、放射性物質等に係る詳細解析は実施しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の段階で広島湾沿岸における試料採取を実施し、Wannierらが報告した微粒子と同一のものを回収することに成功し、一部試料に対し放射光実験で予備的データを取得することができた。一方で、鉛直方向の試料については事前に調整していた地点が土地改良されており、採取不適地と判断された。また広島湾沿岸で採取した試料量が放射能測定等の分析に用いるために必要な量が確保できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
他機関所属の研究者と共同で試料確保を進めるとともに、6種類中鉄含有量の多い4種類に対象を絞ることで、試料量を確保することで集中的に本研究課題の目的を達成する。
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Causes of Carryover |
応募時点で実施を予定していた応力負荷をかけながらの放射光測定が、対象物の強度から必須ではないと考えに至り、専用ジグの購入を見合わせた。その一方で透過像をより高精細に撮るためのコントローラーが必要であることが判明し、次年度は研究課題を推進する上でより効果をもたらす設備投資を行う。また本課題では現地でのフィールド調査が必須であり、当初計画よりも多くの旅費を執行する計画である。
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