2023 Fiscal Year Research-status Report
開水路に潜在する未利用水力エネルギーの有効活用を可能にするサボニウス形水車の開発
Project/Area Number |
23K13699
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
片山 雄介 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (20778815)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サボニウス形 / 小水力エネルギー / 開水路流れ / 自由表面流れ / PIV / 圧力推定 / 固有直行分解法 / 動的モード分解法 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は開水路に潜在する未利用水力エネルギーの有効活用を目的とし,自由表面流れに特化した小型水車の開発としてサボニウス形水車を提案した.本研究で対象とする開水路では流路底面から自由表面にかけての速度分布は一様ではなく,水車ランナを越流する際の自由表面は大変形を伴う.そこで,従来の風車のように底面に対して回転軸を鉛直に設置して運転するのではなく,回転軸を流路底面に対して水平に設置することで,開水路流れを上手く利用して,性能向上を図っている. 初年度は,ランナ周りの流れ場と水車トルクの関係を明らかにすることを目的に研究を実施した.具体的にはPIV測定によりランナ周りの速度分布と水車回転軸にかかるトルクを同時取得し,流れ場とトルクの関係について水車設置位置および回転角ごとに比較評価した.その中で,水車回転角度が30度~120度の範囲で自由表面と進みブレード凸面側との間の流れが特徴的であり,凸面に沿った増速流れとなる.進みブレード凸面に沿った流れ(付着流)は,コアンダ効果により増速されることは古くから知られているが,開水路にサボニウス形を適用したことで,自由表面の変形がランナに干渉し,ブレード表面からの流れのはく離を広い回転角範囲で抑制していることが明らかになった.この回転角範囲では自由空間で得たトルクよりも高いトルクとなり,開水路流れでは揚力の作用も抗力に加えて水車トルクに寄与していることを明らかにした. また,堰上げ効果(水車設置・運転による水車上流の水位上昇)についても各条件下で評価し,堰上げ量と得られるエネルギーの関係を明らかにした. これらの結果より次年度では,速度データから圧力推定を行い,固有直行分解法や動的モード分解法を用いて,データを低次元基底に分割することで,流れ構造の抽出を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,開水路に水平に設置するサボニウス形水車の自由表面からの距離が水車性能に違いを生じさせる要因について,ランナ周りの流れ場と水車トルクの関係を明らかにすることを目的に研究を実施した.具体的には,水車ランナの中央断面(流れ方向と鉛直方向断面)を高速度カメラにより撮影し,PIV測定によりランナ周りの速度分布と水車回転軸にかかるトルクを同時取得し,流れ場とトルクの関係について水車設置位置および回転角ごとに比較評価した.PIVのトレーサには水中を浮遊する気泡とした.速度分布の中で,水車回転角度が30度~120度の範囲で,自由表面と進みブレード凸面側との間の流れが特徴的であり,凸面に沿った増速流れとなる.進みブレード凸面に沿った流れ(付着流)は,コアンダ効果により増速されることは古くから知られているが,開水路にサボニウス形を適用したことで,自由表面の変形がランナに干渉し,ブレード表面からの流れのはく離を広い回転角範囲で抑制していることが明らかになった.この回転角範囲では自由空間で得たトルクよりも高いトルクとなり,開水路流れでは揚力の作用も抗力に加えて水車トルクに寄与していることを明らかにした. また,堰上げ効果(水車設置・運転による水車上流の水位上昇)についても各条件下で評価し,堰上げ量と得られるエネルギーの関係を明らかにした.水車ランナの自由表面からの距離の違いおよび回転速度の違いで,水車上流部の堰上げ量だけでなく,ランナ下流部の自由表面の変動も大きく異なり,この挙動も水車トルクに大きく寄与していることが推測された. PIV測定には高速度カメラから取得した動画をMATLABによる画像処理を施すことで,速度分布を取得した.速度場とトルクの関係,水車設置条件・運転条件の違いによる開水路の流動変化についておおむね把握でき,本研究は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,PIVで取得したランナ周りの流れ場の速度データからPoisson方程式およびNavier-Stokes方程式を利用して,圧力分布を推定する.その後,取得した速度分布および推定した圧力分布からトルク発生に寄与する流れを抽出する.ランナ周りの流れ場は複雑であり,時間的にも空間的にも自由度が高いため,固有直行分解法(POD)および動的モード分解法(DMD)を適用し,データを低次元基底に分解することで,流れ構造を抽出する. また,初年度で得た水車設置・運転条件ごとの堰上げ効果(堰上げ量と得られるエネルギーの関係)から小河川や農業用水路等でよくみられるバックステップ流れ(落差工や帯工)への適応を考慮して,1枚の平板を水車上流に設置することで出力向上を目指す. これらの結果より次年度では,速度データから圧力推定を行い,固有直行分解法や動的モード分解法を用いて,データを低次元基底に分割することで,流れ構造の抽出を目指す.
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Causes of Carryover |
当初,令和5年度の年度末に計画していた実験のための出張が,コロナ感染によりキャンセルとなり,繰越申請に間に合わなかったため,今回申請を行う.
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