2023 Fiscal Year Research-status Report
生体イオン濃度を再現した第一原理分子動力学計算:イオン水和の電子状態ゆらぎ解明
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23K13711
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
黒木 菜保子 中央大学, 理工学部, 助教 (70790012)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | イオン水和 / 分子動力学 / 半経験分子軌道法 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
新薬や生体適合ナノバイオ材料の開発を進めるには、ターゲット系を構成する原子のみならず、体内に複数存在するイオンの電子状態を、バランスの良い精度かつ低い計算コストで評価可能な理論手法の適用が求められる。2023 年度は、アルカリ金属イオンならびにハロゲン化物イオンと水分子間の相互作用が、周辺環境に与える電子状態変化を明らかにすることを目的として、フラグメント理論に基づく EFP-MD シミュレーションを実施した。さらに、タンパク質を含む大規模系への応用を志向し、当該相互作用やハロゲン結合相互作用に対する種々の半経験分子軌道法の記述精度を評価した。以上により、経験パラメータの適切な再最適化を実施することで、半経験分子軌道法による高速な分子間相互作用ネットワーク評価の可能性を見出した。成果の一部を学会発表すると共に、論文執筆を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初の計画通り、EFP-MD シミュレーションによりイオンの水和構造ゆらぎを調査した。積極的な計算コスト削減を目指して、種々の半経験分子軌道法の記述精度も検討し、パラメータ再最適化の指針を得た。関連して、イオン水溶液環境において、ハロゲン結合相互作用を含む大規模系の分子間相互作用ネットワークも評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023 年度に取得したトラジェクトリデータに基づき、水和構造や分子間相互作用の時間発展挙動を、物理化学起源に遡って詳細に評価する。成果を国内学会にて発表し、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
納期の都合、設備備品は次年度以降に購入することとした。2023 年度は、所属研究室の研究資源を活用して、滞りなく研究を進めることができた。また、現在執筆中の論文出版費用も、次年度以降に支出する。
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