2023 Fiscal Year Research-status Report
動的酸化還元プロセスを駆動力とした新奇反芳香族分子構築法の開発
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23K13726
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
島尻 拓哉 北海道大学, 理学研究院, 特任助教 (00963985)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 反芳香族分子 / 酸化還元系 / シクロブタジエン / 近赤外吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、酸化的シクロブタジエン骨格構築を目指し、ジメチレンシクロブテン誘導体の合成とその酸化還元特性について調査した。種々検討を行った結果、プロパルギルアルコールからジメチレンシクロブテン誘導体を簡便かつ高収率で合成可能な手法の開発に成功した。本手法は、従来法では合成困難であったかさ高い置換基を有する誘導体にも適応可能であり、今後ジメチレンシクロブテン誘導体の更なる調査を可能にする。 得られたジメチレンシクロブテン誘導体の酸化還元特性について調査するために、サイクリックボルタンメトリー測定を行った。その結果、一電子酸化還元波が二段階で観測され、酸化によるシクロブタジエン構造の形成が示唆される。実際に、酸化剤を用いて化学酸化を行うことで、ラジカルカチオン塩の合成に成功し、X線結晶構造解析にも成功した。これはカチオン性・ラジカル性置換基を有するシクロブタジエンの初の合成である。紫外可視近赤外吸収分光測定を実施したところ、得られたカチオン種は紫外可視光領域全域を覆うブロードな吸収帯を有しており、吸収端はIR領域にも及ぶことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題にて設定した課題において論文投稿段階まで到達しており、次の成果につながり得る設計指針を獲得できていることから,順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の置換基を有するジメチレンシクロブテンの化学酸化を行い、そのカチオンラジカル、ジカチオンの単離を目指し、さらなる検討を進める。X線結晶構造解析、分光測定、理論計算を組み合わせ、その性質について詳細に調査を行う計画である。
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Causes of Carryover |
標的化合物の合成に際し、当初の想定を上回るスピードと効率で達成することが出来た。そのため、試薬・溶媒・ガラス器具等、合成のために計上していた予算分が、次年度使用分として生じた。繰越分は本課題に伴う消耗品費や、得られた成果を国際的学術誌に発表するための論文掲載費などに割り当てる予定である。
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