2023 Fiscal Year Research-status Report
On-demand preparation of heteroatom radical species
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23K13741
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 康平 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (90845083)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ラジカル / ヘテロ元素 / 光反応 / ゲルマニウム / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では狙ったタイミングにヘテロ元素ラジカル種を自在に供給できるオンデマンド型のラジカル種生成法の開発を目標とする。単分子の光励起から直接ラジカル種を生成する反応は光照射のみで制御が可能なことから、オンデマンドな手法として活用できると着想し、そのための分子を設計した。はじめに、このヘテロ元素ラジカル種生成のための独自の分子の合成法の確立を目指し検討を行った結果、多様なヘテロ元素に適用できる汎用性の高い合成経路を確立できた。続いて、この分子とラジカルアクセプターとしての2-イソシアノビフェニルを溶解させたジクロロメタン溶液に対し456 nmの可視光を照射したところ、ゲルマニウムやリンのヘテロ元素が導入されたフェナントリジンの生成が確認され、単一分子に対し可視光を照射するのみでゲルマニウムやリンのヘテロ元素ラジカル種を生成できることを実証した。さらに、同様の反応が太陽光にさらすだけでも進行することも確認した。しかしながら、ゲルマニウムの同族元素であるケイ素のラジカル種の生成は見られなかった。そこで、DFT計算に基づきヘテロ元素との結合解離エネルギー(BDE)を算出したところ、ケイ素を含む誘導体のBDEは456 nmの光に相当する63kcal/mol程度であったのに対し、ラジカル種を生成したリンとゲルマニウムの誘導体のBDEはそれよりも少し低い55-60 kcal/mol程度であることがわかり、この値がヘテロ元素ラジカル種生成のための指標の一つであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初ターゲットとしていたシリルラジカル種の生成は確認できていないが、その同族元素であるゲルマニウムや15族のリンのラジカル種の生成を実験的に実証できたため。また、実験と理論計算に基づき、ヘテロ元素ラジカル種生成のための方針が立てられたため、今後ケイ素も含む様々なヘテロ元素ラジカル種の生成に向けた分子設計が実現できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の分子設計の指針に基づき、ゲルマニウムやリンだけでなく他のヘテロ元素ラジカル種の生成するための分子設計を目指す。併せて、今回合成できた分子を用いたフロー法での光反応の実現に向けて反応条件を精査する。
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Causes of Carryover |
設計した分子の合成に想定よりも時間を要した。ただその甲斐あって安価な原料のみを用いた合成ルートを見出すことができ、原料費用の大きな削減ができた。今後、原料合成に用いる予定であった費用を活用し、より多様な誘導体の合成を目指し研究を行う。また可視光照射によるラジカル種の生成が実証できたので、それらをフロー法で実用するための必要な器具及び消耗品も適宜購入していく。
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