2023 Fiscal Year Research-status Report
金属-アルケン間の相互作用に着目したanti-Michael反応の開拓
Project/Area Number |
23K13743
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
鈴木 弘嗣 福井大学, テニュアトラック推進本部, 助教 (60827682)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | パラジウム触媒 / 二座配向基 / ヒドロ官能基化 / anti-Michael型付加 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的にα,β-不飽和カルボニル化合物への求核剤の付加反応はβ位選択的である(Michael付加)。一方で、これとは逆の選択性、すなわちα位での求核付加(anti-Michael型付加)は、電子的な要因から困難とされている。そこで本研究ではanti-Michael型付加を実現する手法の開拓を行った。 具体的には、パラジウム触媒の存在下、配向基に8-アミノキノリンをもつアクリルアミドに対するanti-Michael型付加反応の検討を行った。インドールを求核剤として反応を実施した結果、配向基の導入と触媒の効果により、従来とは逆のanti-Michael型付加が選択的に進行することを見出した。また、この反応はアクリルアミドだけでなく、桂皮酸アミド誘導体やクロトン酸アミド誘導体といったβ位に置換基を持つα,β-不飽和アミドにも適用可能であった。しかしβ位置換基として長鎖アルキル基を有する場合には収率が大きく低下することも同時に判明したため、これらの基質に対する収率改善が新たな課題として浮上した。求核剤としてはインドール以外にも2-ピリドンなどのヘテロ求核剤が適用可能であり、これらの化合物でも非常に高い位置選択性が観測された。これらの結果から、anti-Michael型付加反応により、さまざまなα-置換カルボニル化合物を合成できる可能性を示せた。 また不斉anti-Michael型付加反応の検討も行った。不斉配位子として単座配位子を適用することにより、中程度ではあるが、エナンチオ選択性が発現することが判明した。 上記の反応に加えて、anti-Michael型付加を起点とするアルケンの位置選択的な二官能基化反応が中程度の収率で進行することも明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で第一の目的としていた配向基と遷移金属触媒によるanti-Michael型付加が円滑に進行することを示すことができた。加えて、さまざまな求核剤への応用がスムーズに展開できていることから、当初の初年度の目標以上に研究が進行したといえる。 また上記で開発したanti-Michael型付加を基盤として、アルケンの位置選択的な二官能基化が進行することも見出せ、anti-Michael型反応の将来的な応用の方向性も示すことができた。これらの理由から、当初の計画以上に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
さまざまな求核剤にanti-Michael型付加を適用できることが判明したので、これらの反応の収率改善を目指し、検討を進めていく。また研究の進行に伴い、当初想定していた反応機構とは異なる機構で反応が進行する可能性が示唆されたため、反応機構の解明に向けた詳細な検討も行う。 加えて、新たに見出したアルケンの位置選択的な二官能基化についても、その詳細を詰める予定である。
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