2023 Fiscal Year Research-status Report
C-E切断による錯形成を鍵とするX型配位子の拡張に基づくLLX型三座配位子の深化
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23K13749
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
鳥越 尊 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (80823129)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 炭素-ケイ素結合切断 / 炭素-水素結合活性化 / 配位子設計 / ピンサー配位子 / アルカン / 均一系触媒 / 有機ホウ素化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルカン等の触媒的変換は炭化水素資源の有効利用等に資するものと期待されるが、難易度が高く未だ発展途上である。本研究では、この高難度分子変換を志向して独自に設計した、二つの中性配位子(L型配位子)と一つのアニオン性配位子(X型配位子)からなる「LLX型三座配位子」を深化させるべく、X型配位子の拡張を可能とする新手法の開発に取り組んでいる。具体的には、C-Si結合(炭素-ケイ素結合)等のC-E結合(炭素-典型金属結合)の切断による錯形成法の確立を目指しており、2023年度は、研究実施計画に記載した「C-Si結合切断に基づくNNSiピンサー錯体の生成」を中心に取り組んだ。二座窒素配位子を骨格とし、ケイ素上が全て有機基で置換されたNNSi配位子と、イリジウムとホウ素の結合をもつイリジウムボリル錯体との量論反応を検討した結果、C-Si結合切断が進行していることを明らかとした。さまざまなNNSi配位子のC-Si切断を定量的に評価することに成功し、溶媒効果および二座窒素配位子骨格やケイ素上の有機基の違いがC-Si切断に及ぼす影響を明らかとした。また、本手法により生成するNNSi錯体がアルカンの触媒的炭素-水素結合ホウ素化反応に有効であることも明らかとした。特に、従来法(H-Si結合の切断による錯形成)では得ることの困難であった、Si上の有機基の嵩高さを抑えた触媒を得ることにも成功し、今回開発した手法により、簡便にX型Si配位子を拡張することが可能であることを明らかとした。また、立体的に混み合ったPNSi配位子を用いる反応における位置選択性の評価や、NNSi配位子を用いる炭素-水素結合ホウ素化反応における、添加剤の利用による高効率触媒系の開発も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、C-Si結合切断による錯形成が進行することを明らかとするとともに、配位子構造が錯形成の効率に及ぼす影響を定量的に評価することができたため。また、本手法(C-Si結合切断)を活用することで、従来法(H-Si結合切断)では得ることのできなかった触媒構造にアクセス可能であることを明らかとするとともに、その触媒活性を評価することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に得られた知見をもとに、引き続きC-Si結合切断を利用する高活性触媒の開発を志向した検討を実施する。また、C-Ge結合、C-Sn結合切断による錯形成も検討し、ゲルマニウムやスズを配位子としてもつ触媒を開発し、その触媒活性の評価を行う。
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Causes of Carryover |
今年度の直接経費請求額2,600,000円と比較し、使用した額は2,598,099円であり、ほぼ計画通りに執行されたものといえる。一部繰越となった次年度使用額(1,901円)は、次年度の研究実施のための消耗品費に充てる予定である。
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