2023 Fiscal Year Research-status Report
新規配向システムによる不活性C-H結合の切断を基盤とする反応開発
Project/Area Number |
23K13754
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
安井 基博 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (30845912)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | C-H活性化 / C-C結合活性化 / ピラゾール / ヒドラゾン / Heck反応 / パラジウム / 配向基 / シクロプロパン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒドラゾンとアシル基のルイス塩基性を利用することで、パラジウム触媒によるシクロプロパンの活性化を介したピラゾール合成法を確立した。当該年度の研究では、実験と計算化学の両面から反応機構を精査することで、当初の想定とは異なるC-C結合開裂を介した機構で反応が進行することを明らかにした。これと並行して、本ピラゾール合成法を更に有用な手法に深化するため、Heck型C-Hアリール化反応を介したドミノ反応を検討した。触媒、配位子、ハロゲン化アリール、塩基、溶媒およびそれらの当量や温度を詳細に検討した結果、通常は合成することが難しいとされる置換基が隣り合う1,5-置換ピラゾールの化学選択的な合成法の確立に成功した。様々な原料およびヨウ化アレーンを見出した反応条件に附し、反応の進行を確認したところ、本手法の高い一般性が明らかになった。その後、種々の対照実験を行うことで、反応経路とそれぞれの反応剤の役割を明らかにした。さらに、生成物に含まれるアシル基の変換について、種々検討した。その結果、アシル基の化学変換は容易に行えることが確認され、「変換容易な配向基を用いた新しい化学変換」という研究開始時のコンセプトが実証された。 続いて、アミノ窒素の置換基に関する検討を行ったところ、シクロプロピル基以外の置換基では本反応は進行しなかった。この結果はC-C結合開裂を介した機構で本反応が進行する考察と一致している。そこで、シクロプロパン以外の原料については当初の戦略とは異なる不活性結合の活性化を試みた。種々検討の結果、光レドックス触媒存在下でヒドラゾンのアミノ窒素α位のC-H結合を活性化できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、新規な配向システムを利用することで不活性結合を切断し、ピラゾールを合成する新たな方法論を見出した。さらに、アリール化を伴うピラゾール合成法も確立し、有用な方法へと発展させることに成功した。 一方、反応機構を詳細に確認することはできたものの、その結果として、切断される結合が当初想定されたC-H結合ではなく、C-C結合であることが明らかになった。そのため、シクロプロパン以外の原料を用いた反応への展開が困難となり、ヒドラゾンの反応性を改めて見直す必要性に迫られた。当初の想定とは異なったものの、種々の検討を行うことで、新たな不活性結合の活性化法を見出すことに成功した。 以上の結果から、当初の計画より遅れることなく研究が進行し、一部予期しない結果が見られたため、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の検討で、パラジウムを用いる方法とは異なる活性化法で、ヒドラゾンのアミノ窒素α位の新規C-H官能基化が進行することを見出した。本反応ではカスケード反応が進行する三環性骨格の合成と、シンプルなC-H官能基化のいずれかが進行する。今後は当該年度に見出したこれらの知見を活かし、それぞれの反応が進行する最適な条件を見つけるための条件検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
当該年度は異動一年目で、予期していなかった新任教員への研究支援制度を頂けたため、余剰金が生じた。繰り越した余剰金は本研究の進展に有用な質量分析装置の購入の一部に充て、使用計画を再構築する。すなわち、次年度使用額2,788,504円のうち、2,000,000円:設備備品費 (質量分析装置, 合算使用)、758,504円:消耗品費、30,000円:旅費
で配分する計画とする。
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