2023 Fiscal Year Research-status Report
NMRを利用したMOFのガラス相におけるダイナミクス解析
Project/Area Number |
23K13759
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荻原 直希 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70848267)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | MOF / ガラス / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
金属イオンと有機配位子から構築される金属-有機構造体(metal-organic framework; MOF)のガラス相は、新たな有機-無機ハイブリッドガラス材料として、注目されている。MOFガラスのマクロなダイナミクスはレオロジー特性の評価により、知見が蓄積されつつあるが、そのミクロなダイナミクスについては理解が進んでいない。 そこで本研究では、固体2H NMRの手法を用いることで、MOFガラスにおけるミクロなダイナミクス、具体的には、有機配位子の回転・振動運動についての知見を獲得することを目的とした。ターゲットとするMOFとしてはガラス化が容易なZIF-62を選定し、2H NMR測定のためにZIF-62を構成する有機配位子の重水素化を行った。ガラス化がZIF-62の配位子運動に与える影響を調べるために、ZIF-62の結晶相およびガラス相の温度可変の2H NMR測定を行い、ピークパターンの比較を行った。しかしながら、ガラス化前後でピークパターンに有意な違いは見られず、ガラス相固有のダイナミクスは観測することができなかった。 そこで、2H NMRの緩和時間測定により、ZIF-62の配位子運動の詳細な解析を行った。その結果、ガラス相においては、配位子の協同的なフリッピング運動の活性化エネルギーが結晶相と比較して低下し、この協同的な運動が促進されることが観測された。これは、ZIF-62のガラス相において、金属イオン近傍の配位角の歪みが生じ、配位子の配列に関する短距離秩序が消失したためだと示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では本年度は、MOFの結晶相およびガラス相における配位子のダイナミクスの評価に専念し、論文執筆は次年度に行う予定であった。しかしながら、本年度のうちに論文執筆し、論文投稿まで行うことができた(現在査読中)。 以上から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、MOFのガラス化が配位子運動に与える影響の調査に加え、MOFガラスへのゲスト分子の導入が配位子運動に与える効果を理解することを目指して行く。また、MOFガラスに導入された分子のダイナミクスに関する知見も獲得したいと考えている。
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