2023 Fiscal Year Research-status Report
Dynamic molecular capsule composed of metal–organic polyhedra
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23K13762
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立石 友紀 京都大学, 高等研究院, 特別研究員(PD) (00973116)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 金属錯体多面体 / 事後修飾 / 分子カプセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属錯体多面体(以下、MOPs)を節とし、MOPs同士を伸縮可能な有機分子によって繋ぐことで多様な分子認識部位の導入が可能な、新しい分子カプセルを創出することを目的とする。実現に向けた課題は(1)テンプレートへのMOPの固定、(2)テンプレート上でのMOP連結によるカプセル化、(3)事後修飾による分子認識部位導入および分子認識能の開拓 の3点が挙げられる。上記に挙げた課題の中でも本研究の根幹は課題(2)への解決策の一つである、MOP上での事後修飾法の確立である。 今年度は、12個のカルバゾールジカルボン酸からなる八面体型ロジウムMOPに注目して研究を行った。MOPs同士を繋ぐ上でMOPs表面上の反応サイト数の制御は有効である。無置換のカルバゾールジカルボン酸と、ベンジル基の導入によりMOP表面上の反応サイトをあらかじめ塞いだ状態の9-ベンジル-9H-カルバゾール-3,6-ジカルボン酸を混合してロジウムMOP合成を行うことで、MOP 1分子上に導入されているベンジル基の数を1,3,6,9,11個にそれぞれ調整することに成功した。 また、無置換のカルバゾールジカルボン酸12個からなる八面体型ロジウムMOPに対し、求電子性官能基を有した塩化アルキル化合物を塩基性溶液中で反応させることで、ロジウムMOP表面に求電子性官能基を導入し、求電子剤へ変換することに成功した。続いて求核性の官能基を有するアミノ酸と反応させたところ、1H NMRスペクトル上で新たな信号が確認された。以上の結果はロジウムMOP表面の事後修飾によって導入された求電子性官能基が、逐次的に反応し、二段階の分子変換が可能であることが示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MOP表面にある反応サイトの数の制御およびMOP表面の事後修飾による多段階の分子変換が可能であることを明らかにした。これによって(1)MOPのテンプレート上への固定と、(2)MOP同士の連結 の2種の異なる課題を、共有結合形成を伴う事後修飾によって解決可能になる道筋が示唆された。現在はMOPを節とした分子オリゴマーの合成に向け、条件検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実現した事後修飾の知見を活かし、配位結合ならびに動的共有結合によってMOPをテンプレート上に固定し、その希薄溶液中で、MOPの数が制御された分子カプセルの創出を進める。適切なテンプレートおよびリンカー分子の検討、ならびにMOPの連結に用いる溶媒や濃度を検討することで、ポリマー化を抑えた合成条件を最適化することで分子カプセルを合成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた大きな理由の一つは、本研究計画に必須であるロジウム原料価格の下落である。本研究費の申請時(2023年4月)の1トロイオンス(約30g)あたりの価格は7,500米ドル(当時のレートで約100万円)であったが、当該年度中盤の2023年7月5日には4,000米ドル(当時のレートで約58万円)と半額近くまで下落した。 一方で2024年度以降は、地政学的な影響および歴史的円安もあり、ロジウム価格は本報告書作成現在でやや上昇傾向にあり、2024年4月26日時点で4,715米ドル(約74万円)である。今後、いつ、どの程度上昇を続けるか予断を許さない上、当該年度に明らかとなった知見を生かした研究計画の発展を見据え、次年度には本年度以上のロジウムの使用および物品費支出の増加を予定している。
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