2023 Fiscal Year Research-status Report
天然由来ペプチドの膜反応制御と膜透過可能な開閉制御型薬剤キャリアへの応用
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23K13773
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
坂江 広基 金沢大学, 物質化学系, 助教 (00779895)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 液液界面 / 生体膜模倣界面 / 分光電気化学 / 細胞膜透過ペプチド / 薬剤キャリア / 分子包接 / アポフェリチン |
Outline of Annual Research Achievements |
天然由来で生体毒性の無い細胞膜透過性ペプチド(CPP)であるε-ポリ-L-リジン(εPL)に蛍光性のカルボキシフルオレセイン(FAM)を修飾することで(εPL-FAM)分光電気化学測定を可能にし、εPL-FAMの水|1,2-ジクロロエタン(DCE)界面あるいはリン脂質膜を形成させた生体膜模倣界面における反応機構を、電位変調蛍光分光法で解析した。水|DCE界面と比較すると、生体膜模倣界面ではリン脂質膜との静電相互作用によって界面吸着し易く、そのため相間移動も促進されることが明らかとなった。従来から合成されているCPPであるオクタアルギニン(R8)を用いた比較研究では、R8の膜吸着性がεPLよりも高く、膜透過機構も両者で異なることが明らかとなった。さらに、高分子医薬品送達を志向して、通常は膜透過能を示さない蛍光性タンパク質の単量体アザミグリーン(mAG)にεPL修飾を施した(εPL-mAG)。εPL-mAGの膜透過を達成し、現在、その機構を分光電気化学的に研究している。 また、鉄貯蔵タンパク質であるアポフェリチン(AFt)の分子包接特性と界面反応機構を研究した。AFtによる難溶性薬剤の可溶化を達成し、薬剤包接AFtの界面反応機構も明らかにしつつある。一方で、AFtへのεPL修飾は難航しているため、より詳細な条件検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、計画していたεPLおよびεPL修飾タンパク質の膜反応の分光電気化学解析を達成し、それらとリン脂質膜との相互作用と膜透過機構を解明できた。また、AFtへのεPL修飾は難航しているが、AFtの包接特性を定量的に評価できた。得られた知見は、今後の開閉制御型薬剤キャリアの開発に応用できる。
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Strategy for Future Research Activity |
より生体膜表面に近い界面で研究を行う。これまでの両性リン脂質膜にカチオン・アニオン性脂質を添加した生体膜模倣界面におけるεPLの反応特性を分光電気化学的に研究する。また、溶液中に含まれるイオンのサイズや親水・疎水性を変化させ、εPLの膜透過に及ぼす周辺環境の影響を精査する。 AFtへの包接法の最適化を検討する。酸・塩基反応によるケージ開閉による包接だけでなく、AFtの疎水性チャネルを利用した開閉を伴わない内部への輸送を試みる。薬剤内包AFtの薬剤放出能を定量的に評価し、AFtを薬剤キャリアとして利用する。他方、AFtへのεPL修飾も引き続き試みる。修飾が難航した場合は、生体関連色素やモデル高分子タンパク質へのεPL修飾を行い、AFtへのεPL修飾に対する知見を得る。モデル物質のεPL修飾体の界面反応機構を分光電気化学的に解明し制御することで、εPL修飾アポフェリチンの膜透過反応研究に応用できる知見を得る。
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Causes of Carryover |
昨今の円安の影響を受け当初購入を予定していたマイクロプレートリーダーが高騰したため購入を見送り、次年度の購入を予定している。
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