2023 Fiscal Year Research-status Report
Precise control of staging structures for the development of colloidal nanosheets with multi-layer structures
Project/Area Number |
23K13813
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村松 佳祐 信州大学, 先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所, 助教(特定雇用) (50915353)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 層状物質 / ナノシート / インターカレーション / 超格子構造 / 酸化ルテニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酸化物系層状物質のステージ構造を精密かつ自在に制御する合成基盤の構築を通じ、コロイド状無機ナノシートの「積層数制御」を軸とした設計指針の開拓を目標に掲げている。この目標達成に向け、①ステージ構造の形成条件と構造安定性の相関解明、②ステージ構造体の選択的はく離法の開発およびコロイド状多層ナノシートの物性評価に取り組んでいる。 アプローチとして、層間に均一に溶媒を含んだ層状前駆体における溶媒の脱離反応の制御を通して、ステージングを制御する方針を採用している。本年度は、水和層間と無水和層間が1層毎に交互に存在するステージ2構造体の形成が観測されているプロトン型層状酸化ルテニウムを対象物質とし、脱水和過程におけるステージ構造の形成条件を詳細に検討した。層外部の水分子の量が脱水和反応の平衡に影響を及ぼす重要な因子となると予想し、種々の温度・湿度環境における水和層状ルテニウム酸の構造変化を評価したところ、ステージ2構造体が主生成物として生成する条件を見出した。これは脱水和反応の進行度を平衡論的に制御できることを示している。 多層ナノシートの合成のために、ステージ2構造を有する層状ルテニウム酸と有機ゲストの反応性を評価した。特定の有機ゲストを用いた場合に水和層間に優先的にイオン交換を進行させることができ、ステージ2構造が維持された層状有機ルテニウム酸の合成に成功した。はく離による多層ナノシート化に向けて有望な前駆体となるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、層状酸化ルテニウムの脱水和反応の制御方法およびステージ構造を保った有機カチオンのインターカレーション方法に関して成果を得た。いずれもステージ構造体の精密合成法や多層ナノシートの選択的合成法の開拓につながる重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き層状酸化ルテニウムを用いてステージ構造の形成条件の検討およびはく離によるコロイド状多層ナノシートの合成に取り組む。特に高湿度環境においてステージ構造体の生成割合が湿度に大きく依存するため、ステージ構造の形成に最適な脱水和条件を更に検討する。さらに生成物の水和量を基に、ステージング相の安定性に関する定量的な考察に努める。また、物性評価の方向として、電気化学的手法による多層ナノシートの酸化還元挙動や伝導性の評価を検討している。
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Causes of Carryover |
飽和塩水溶液を用いた湿度制御法を採用したことで、予定していた恒温恒湿槽の購入が不要となったため、並列合成設備や分析機器の拡充に重点的に配分することにした。この変更に伴う研究計画の遅延は生じない。
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