2023 Fiscal Year Research-status Report
異常高原子価イオンを含む複合アニオン化合物の開拓と電荷転移制御
Project/Area Number |
23K13814
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 真人 京都大学, 化学研究所, 助教 (10813545)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 相転移 / 価数不安定性 / 強酸化条件 / 異常高原子価 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、異常高原子価鉄イオンを含むペロブスカイト型化合物をターゲットとして、オゾン酸化法や高圧合成法などの強酸化条件下での合成法を用いることで、新規物質の探索と得られた物質の物性測定を行った。まず、異常高原子価Fe5+イオンを含むBサイト岩塩型ダブルペロブスカイトLn2LiFeO6(Ln:ランタノイド)については、昨年度までに6つの新物質Ln2LiFeO6(Ln: La, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy)に成功しており、新たにLn2LiFeO6(Ln: Ho, Y)の合成にも成功した。また、Ln2LiFeO6(Ln: Gd, Dy)については、昨年度の段階では不純物相の存在が見られたが、合成圧力等を最適化することにより、ほとんど単相試料が得られた。さらに、磁化測定の結果から、既に論文で報告しているLn2LiFeO6(Ln: La, Nd, Sm, Eu)ではいずれも強い反強磁性相関が働く一方で、Ln2LiFeO6(Ln: Gd, Dy)では弱い強磁性相関が支配的であることが判明した。Ln2LiFeO6(Ln: Gd, Dy)の物性の詳細については、今後調べていく予定である。 また、異常高原子価かつ混合原子価であるFe3.5+イオンを含むAサイト層状ダブルペロブスカイトLnBaFe2O6(Ln:Pr, Nd, Sm)の合成にも成功した。これらの物質は、酸素欠損秩序型ダブルペロブスカイトLnBaFe2O5を前駆体として、オゾンガスを流しながら低温でアニールし、トポタクティック酸化を施すことにより、いずれも単相試料が得られた。これらの物質はいずれも、Fe3.5+の価数不安定性に起因して、多段階の電荷・磁気相転移を示すことを明らかにした。Ln = Smの結果については、論文で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、新たに異常高原子価Fe5+イオンを含むBサイト岩塩型ダブルペロブスカイトLn2LiFeO6(Ln: Ho, Y)とFe3.5+イオンを含むAサイト層状ダブルペロブスカイトLnBaFe2O6(Ln:Pr, Nd, Sm)を合成することができ、特にLnBaFe2O6(Ln:Pr, Nd, Sm)に関しては、Fe3.5+の価数不安定性に起因して特異な逐次相転移が現れることを明らかにすることができたことから、おおむね計画は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Ln2LiFeO6については、まずLn = Gd, Dy, Ho, Yの基礎物性評価を評価し、Lnイオンが構造や物性に与える影響を明らかにする予定である。また、Ln = La, Nd, Hoの中性子回折測定を行い、磁気構造解析も行う予定である。LnBaFe2O6については、Lnの違いにより、相転移温度や相転移挙動が大きく異なることから、Ln = Eu, Gd, Tb等の合成を行い、特異な逐次相転移の制御を試みる予定である。また、LnBaFe2O6は室温付近で大きな潜熱を伴う一次相転移を示すことから、巨大潜熱を生かした圧力熱量効果等の検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度は、主に物性測定に時間を割いており、高圧合成に不可欠なPtチューブなどの消耗品をあまり購入しなかったため、次年度に一部研究費を繰り越すこととなった。次年度は、異常高原子価鉄イオンを含む新規物質の探索に取り組むため、高圧合成用の消耗品購入のために研究費の多くを用いる予定である。
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