2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of High-voltage Li-ion Batteries
Project/Area Number |
23K13817
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
コ ソンジェ 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90910282)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 二次電池 / 電解液 / 電気化学 / 高電圧リチウムイオン電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
地殻に豊富に存在し、高い容量を持つSiOx負極と、高価なコバルトを使用しない高電位スピネルLiNi0.5Mn1.5O4正極の組み合わせは、最も理想的な電池の一つである。しかし、これらの電極反応電位は、電解液の電位窓(1~4.5V)を超えるため、負極と正極の表面で電解液の還元/酸化分解が激しく起こる。これを克服するために、電解液の還元分解を速度論的に抑制する負極表面保護膜(SEI)の形成や、フッ素化溶媒と塩を用いた高酸化耐性化に着目した研究が行われてきたが、SiOx|LiNi0.5Mn1.5O4フルセルの安定動作の報告例は未だない。
本研究では、新しい重要要因を加えた電解液を設計した。イオン対集合体を形成する電解液を設計し、SiOx電極反応電位を上昇させ、電極表面での電解液の還元分解を抑制した。具体的には、エチルメチルカーボネート(EMC)にフッ素官能基を導入したFEMC溶剤を使用し、溶媒和能の低下とイオン対の形成を促すとともに、高い酸化耐性を付与した。また、塩濃度を増加させ、イオン対集合体が優位な溶液構造を形成し、SiOx電極の電位を上昇させた。これで、電解液還元分解の熱力学的駆動力が減少されると同時に、SEIの負担も軽減された。加えて、高電位でのアニオン由来SEIの形成を促し、SiOxの体積変化に対応した。これでSiOx表面における電解液の還元分解が高度に抑制された。正極側では、電解液の酸化耐性だけでなく、溶媒活量の低下による正極集電体の腐食や正極からの遷移金属の溶出などの副反応も抑えた。これらの包括的な最適化により、コバルトフリー5V級SiOx|LiNi0.5Mn1.5O4フルセルの長期安定動作(0.5C-rate、4.9Vの上限カットオフ電圧で1000サイクル後に80%の容量維持率)を初めて達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論計算の同僚研究者と共同研究することで、電極電位変位の電解液依存性に対する理解を深めることができた。具体的に、電解液中キャリアイオンの配位子を、電子が酸素原子にLocalizationしている溶媒から、電子が分子全体に広くDelocalizationしているバルキーなアニオンに置き換えることで、キャリアイオンが感じる静電ポテンシャルが大きく変化し、電極電位をアップシフトさせる。このメカニズムを応用した電解液を設計することで、今まで困難であった次世代二次イオン電池の安定作動に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究により、新たな電解液設計指針を提案した。電極表面における電解液分解を高度に抑制する熱力学的(Li/Li+の酸化還元電位のアップシフト)および速度論的(アニオン由来SEI形成)手法を開発できた。これを応用しコバルトフリー・高電圧・高容量の5V級SiOx|LiNi0.5Mn1.5O4フルセルの長期安定動作を世界で初めて達成した。この成果は、コインセルを用いた実験によって証明された。今後はこの研究で明らかにされた電池劣化抑制メカニズムを、円筒型セルやパウチセルといった商業用途に適した大規模な実験系に適用することを目指す。さらに、高エネルギー密度と安全性を兼ね備えた高電圧電池向けに、難燃性や消火性を有する電解液添加剤の開発にも注力したい。
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