2023 Fiscal Year Research-status Report
Cas9を用いたゲノム編集におけるHDR効率向上に重要な要素の探索
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23K13844
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松本 大亮 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (20889381)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 相同組換え / CRISPR-Cas9 / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに報告されたCas9変異体について相同組換え効率の評価を実施した。その結果、EMX1遺伝子を標的としたsgRNAを用いた際に、eSpCas9, SpCas9-HF1, LZ3Cas9において野生型Cas9と比較して高い相同組換え効率が得られた。これらのCas9変異体にはRuvCIIIドメインにおける変異が共通して見られることを見出した。さらに、これら3つの変異体についてこれまでに開発してきた細胞周期依存的な活性化系を導入した。3種類の標的配列について相同組換え効率をHEK293細胞を利用して評価した。その結果、予想に反してeSpCas9とLZ3Cas9をAcrIIA4-Cdt1やAcrIIA5-Cdt1で細胞周期依存的に活性化しても、相同組換え効率は向上せず、逆に減少する結果となった。一方でAcrIIA4-Cdt1を用いてSpCas9-HF1を細胞周期依存的に活性化させた場合に関しては、相同組換え効率が上昇し、オフターゲット作用も低減することがわかった。さらに標的配列における変異導入率も減少していた。これらの結果から、SpCas9-HF1とAcrIIA4-Cdt1を共発現することによって、正確な遺伝子治療を実現できる可能性が示された。 また、相同組換えを効率よく行う変異体を取得するスクリーニング系も構築し、スクリーニング条件の最適化を実施した。このスクリーニングシステムを利用してCas9変異体の選抜を行った結果、野生型Cas9と比較して相同組換えを誘発できるCas9変異体を取得できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cas9変異体における相同組換え効率の違いを発見し、変異箇所によるCas9と標的DNAの相互作用変化と切断後のDNA修復機構の関係性が示唆された。特に、相同組換え効率という点において、標的配列のGC含量によって野生型Cas9の方が有利な場合と、変異体が有利な場合が明確に分かれた。今後はこの結果がなぜ起こったのかという点に着目し、研究を進めていく。 また、スクリーニングによって得られたCas9変異体において、野生型Cas9よりも高い相同組換え効率が得られたことから、この変異体においても詳細なメカニズム解析を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出したAcrIIA4-Cdt1によるSpCas9-HF1活性を制御するシステムを利用することで、in vivoにおける正確な遺伝子ノックインが可能かを評価する。 また、スクリーニング系についても引き続き実施し、得られた変異体がなぜHDR効率を向上させたのかという点についてメカニズム解析を実施する。
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Causes of Carryover |
別のプロジェクトにおける共同研究で3ヶ月間ほどアメリカに滞在していたた都合上、予定していた学会への参加を見送った。そのため、旅費の利用が想定よりもなかった。次年度は、今年度において得られた結果を報告するために、国際学会への参加と発表を行う予定である。
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