2023 Fiscal Year Research-status Report
化学合成で紐解くポリアミン-ペプチド複合型海産毒の修飾様式と活性中核構造
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23K13849
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
入江 樂 横浜市立大学, 理学部, 助教 (50835238)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ポリアミン / N-アルキル化 / 保護基 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋天然物アキュレインAは創薬シードとして有望な膜透過性ペプチドであるが、3組のジスルフィド結合を含むポリペプチドが2本の長鎖ポリアミンによる修飾を受けた複雑な化学構造を有しており、天然物の稀少性も相まってその詳細な構造は未決定である。 ポリアミンの導入機構の合成化学的解明、および人工類縁体の迅速な合成に向けて、本年度はまずポリアミン合成の効率化に取り組んだ。3量体ポリアミンを最小構成単位として、末端の保護基(NPEC、Alloc基)それぞれの選択的除去とジハロプロパンを用いた連結を基本戦略とし、ポリアミンの連結順序および用いるハライドについて系統的な条件検討をおこなった。最終的に7量体を高収率で与える経路を確立し、同様の戦略によって長鎖の11量体および15量体ポリアミン保護体の合成も達成した。 また、2-ニトロベンゼンスルホンアミド基(Ns基)はアミノ基の保護と同時にアルキル化反応の活性化にも作用する優れた保護基であるが、長鎖ポリアミンの合成においてはその個数の増大や保護パターンが、目的物の物性や反応性にしばしば悪影響を与えることを観察していた。そこでポリアミンの連結後にNs基をBoc基に付け替えることでこれらの問題解決を図った。チオラートによるNs基の除去が完結したところに過剰量のBoc2Oを作用させることで、Boc基へのワンポットでの変換が可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究成果は、アキュレイン類の合成研究における課題であった、長鎖ポリアミン部分の化合物供給の制約を解決するものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究代表者は、アキュレインAの化学構造について複数の候補を考えている。これらのモデル化合物を合成し、天然物の質量分析データや反応性との比較をおこなうことで、アキュレインAの化学構造を推定する。 今後は本年度に確立した合成経路を用いて調製した長鎖ポリアミンをペプチドに導入し、アキュレインAの全合成を目指す。
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Causes of Carryover |
予定していた分析機器(LC-MS)のメンテナンス費用の支出が必要でなくなったことが主として挙げられる。 次年度以降、必要に応じてこれらの用途に使用する予定である。
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