2023 Fiscal Year Research-status Report
テロメア結合タンパク質のグアニン四重鎖トポロジー結合選択性の解明
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23K13854
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 捷悟 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (20936827)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グアニン四重鎖構造 / ヘキサオキサゾール化合物 / G4リガンド / テロメア / Thrombin |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体末端に存在するテロメアはグアニン豊富な一本鎖配列を有しており、本領域において、グアニン四重鎖(G4)と呼ばれる特殊な高次構造が形成する。このテロメアG4と結合するタンパク質 (G4BP) であるPOT1は、テロメアG4が取り得る3つのトポロジーをそれぞれ区別して結合すると推測されているが、生体内でその結合様式を解明した例はない。そこで本研究では、テロメアG4の三種トポロジーをそれぞれ個別に制御でき、かつG4-POT1複合体を架橋できるG4プローブを創製する。これを用いて、in vitroにおけるトポロジーごとのテロメアG4-リガンド-POT1の三者複合体の形成を確認し、最終的に生細胞に各トポロジーに制御するリガンドをそれぞれ作用させPOT1のプルダウンを計画している。以上の実験により、細胞内でPOT1が結合するテロメアG4のトポロジーを明らかにすることを目的としている。 初年度では、in vitroにおいてG4BPがトポロジーごとに相互作用が実際に変化するかを検討した。その結果、トポロジー変化能を有するL2H2-2M2EA-6LCOがThrombin-binding aptamer配列 (TBA)のトポロジーを変化させることで、Thrombin (G4BPの一種) のTBA-G4に対する結合が変化することを見出した。本成果は、2023年にChemical Communicationsで公表した。 最終年度では、目的である「細胞内でPOT1が結合するテロメアG4のトポロジーの解明」を達成するために 、in vitroおよび細胞内でのPOT1-G4-リガンドの三者複合体のトポロジー解析を計画している。具体的には、(i) in vitroでのPOT1-G4-リガンドの三者複合体のトポロジー解析、(ii) POT1の細胞内でのトポロジー選択性の解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、目的である「細胞内でPOT1が結合するテロメアG4のトポロジーの解明」を達成するために、in vitroでのPOT1-G4-リガンドの三者複合体のトポロジー解析を計画している。 まず始めに、現在未だ報告例が少ない、リガンドを用いたG4のトポロジー変化によるG4結合タンパク質 (G4BP) が各トポロジーに対して結合能が変化するかを評価することとした。今回、テロメアG4とPOT1のモデル実験として、G4形成配列の一つであるThrombin-binding aptamer配列 (TBA) および、そのG4BPであるThrombinを用いて実験を行った。Thrombinはセリンプロテアーゼの一種で、フィブリノーゲンをフィブリンに変換する。これに対して、TBA-G4を作用させることで、Thrombinの酵素反応は抑制されることが知られている。TBA-G4は通常アンチパラレル型を形成するため、本トポロジーを申請者が見出したリガンドにより変化させることで、Thrombinの結合能の変化を評価することとした。その結果、TBA-G4にL2H2-2M2EA-6LCO (6LCO) を添加すると、パラレル型へ変化することがわかった。そこで次に、6LCOを用いたTBA-G4のトポロジー変化でThrombinの結合が変化するかを評価するために、Thrombin活性実験を行った。フィブリノーゲン存在下、Thrombinに対してTBA-G4を添加すると酵素反応が阻害され、フィブリンへの変換が抑制された。本条件に対して6LCOを添加すると、阻害された酵素反応が回復しフィブリンへの変換が促進された。以上から、リガンドを用いたG4のトポロジー変化によりG4BP の各トポロジーに対する結合能が変化することを見出した。本成果は、2023年にChemical Communicationsで公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、リガンドを用いたG4のトポロジー変化によりG4BP の各トポロジーに対する結合能が変化することを見出した。そこで最終年度において、(i) in vitroでのPOT1-G4-リガンドの三者複合体のトポロジー解析、(ii) POT1の細胞内でのトポロジー選択性の解析を行う。具体的には、4月から10月の期間で項目(i)を行い、11月から3月の期間で項目(ii)を行う予定である。 項目(i)に関して、申請者がこれまでに見出したそれぞれのトポロジーに変化させるG4リガンド群でテロメアG4を変化させ、POT1との三者複合体を電気泳動で確認する。この際、パラレル型テロメアG4と結合するG4BPとしてHP1α(ヘテロクロマチン1α)を、ハイブリッド型テロメアG4と結合するG4BPとしてFUS/TLS(Fused in Sarcoma/ Translocated in LipoSarcoma) も用いて実験を行い、それぞれのトポロジーに関する知見を得る。さらに、この三者複合体状態のCDスペクトルを測定し、テロメアG4のトポロジーが維持されているか評価する。これにより、in vitroでのPOT1-G4-リガンドの三者複合体のトポロジーを解析する。 項目(ii)に関して、見出したリガンドを用い、細胞内でのPOT1のプルダウン実験を行う。具体的に本実験では、1) POT1が発現している、2) Pot1変異が高発現していない、ことが確認されているU2OS細胞を用いて実験を行う。このU2OS細胞に対して、合成したG4リガンド類をそれぞれ添加培養することで、G4-リガンド-G4BPの複合体を形成させる。数時間静置後に、プルダウンを行うことで複合体を回収する。こうして得られた複合体類を抗POT1抗体でウェスタンブロッティングし、プルダウン効率を定量する。
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Causes of Carryover |
申請者は、初年度において目的である「細胞内でPOT1が結合するテロメアG4のトポロジーの解明」を達成するために、in vitroでのPOT1-G4-リガンドの三者複合体のトポロジー解析を計画していた。本実験で使用するG4結合タンパク質 (G4BP) は非常に高価であり実験操作を誤ると、壊れてしまう可能性があった。そのため前段階として、同じくG4BPであるThrombinとTBA (Thrombin-binding aptamer) 配列の組み合わせを用いて実験を行った。その結果、初年度研究業績で記入したように、目的とするトポロジー解明の知見および実験操作に関する知識を得ることに成功した。そこで、実際に使用するPOT1をはじめとするG4BPを購入しようと業者に掛け合ったところ、非常に高額かつ納期が大分長く購入できていないため、次年度使用額が生じてしまった。現在、なるべく早く業者だけでなく大学等からG4BPを購入あるいは分取して頂くことを計画している。
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