2023 Fiscal Year Research-status Report
パルプ製造廃液から生分解性ポリマー原料の大量生産の実現
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23K13875
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
荒木 拓馬 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (40842307)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | リグニン / アルカリ酸素蒸解 / 2-ピロン-4,6-ジカルボン酸 / Pseudomonas属細菌 / バイオものづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
木材のアルカリ酸素蒸解で得られる黒液を原料とした2-ピロン-4,6-ジカルボン酸 (PDC)の大量生産系の開発を目指して、本年度は黒液中に主要に含まれるバニリン (VN)、バニリン酸 (VA)、シリンガアルデヒド (SN)、シリンガ酸 (SA)からのPDC生産系の構築を行った。広域宿主ベクターpSEVA241に、Pseudomonas属細菌由来のVA O-デメチラーゼ遺伝子 (vanAB)、およびp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ遺伝子 (pobA)と、Sphingobium lignivorans SYK-6株由来のプロトカテク酸4,5-ジオキシゲナーゼ遺伝子 (ligAB)、CHMSデヒドロゲナーゼ遺伝子 (ligC)、3-O-メチルガリック酸3,4-ジオキシゲナーゼ遺伝子 (desZ)、VNデヒドロゲナーゼ遺伝子 (ligV)、SNデヒドロゲナーゼ遺伝子 (desV)、およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子 (bzaA)を高発現プロモーター制御下で導入することでPDC生産プラスミドを作製した。作製したプラスミドをPseudomonas putida PpY1100株に導入することでPDC生産株を得た。作出したPDC生産株を5 mMのVN, VA, SN, またはSAをそれぞれ含む培地で培養した結果、各化合物を95%以上のモル収率でPDCに変換できることが明らかとなった。以上のことから、黒液中の主要化合物であるVN, VA, SN, およびSAから高効率にPDCを生産する微生物株の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り、黒液中の主要化合物であるバニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、およびシリンガ酸からそれぞれ95%以上のモル収率でPDCを生産する微生物株の開発に成功した。よって、全体の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に作出したPDC生産株を使用し、ジャーファーメンターを用いた流加培養によるPDC生産が可能かを検証する。すでに、バニリン酸を基質とした流加培養によるPDC高濃度生産条件は確立済みである。本条件をもとに、バニリン、シリンガアルデヒド、またはシリンガ酸を基質とした場合の基質添加時期・添加濃度、溶存酸素量の最適化を行い、各基質から得られるPDCの最大収量・収率を明らかにする。さらに、黒液中の化合物濃度の比を模した基質混合溶液を調製し流加培養を行うことで、複数基質が存在する場合の培養への影響と、得れられるPDCの最大収量・収率を調査する。
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Causes of Carryover |
次年度はジャーファーメンターを用いて黒液に含まれる主要リグニン由来芳香族化合物からのPDC生産を検証するにあたり、PDC源となる化合物(バニリン、バニリン酸、シリンガアルデヒド、シリンガ酸)を大量に購入する必要がある。本年度は次年度の化合物の購入に向けて予算を節約したため、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は、上述したPDC生産に使用する4種の化合物の購入費用として使用する。
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