2023 Fiscal Year Research-status Report
脂溶性情報伝達分子の過酸化によるフェロトーシス誘導の分子機構解明
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23K13888
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
加藤 主税 静岡大学, 農学部, 助教 (70913250)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | フェロトーシス / 過酸化脂質 / ジアシルグリセロール |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度の計画であるリン脂質の酸化物(PLOOH)から脂溶性情報伝達物質の酸化物(DAGOOH)への代謝機構の評価に向けて、細胞試料中のDAGOOH分析条件の改善を実施した。LC-MS/MS分析については、合成したDAGOOH標品を用い、Naを使用することで異性体レベルでの分析条件を構築できた。細胞試料からのDAGOOHの抽出方法は引き続き添加回収試験により検討しており、最適化後細胞におけるPLOOHからDAGOOHへの代謝を評価する。また、これまでに培地中のα-トコフェロール(Toc)の有無を調節することでフェロトーシスの誘導が可能なグルタチオンペルオキシダーゼ4欠損(GPX4 KO)HepG2を作製している。この細胞を用いて、フェロトーシス誘導に対するスフィンゴミエリン合成酵素(SMS)の阻害剤やDAGの標的であるProtein kinase C(PKC)阻害剤の影響を検証した。結果、PLOOHを処理した場合と同様にSMS網羅的阻害剤のD609やPKC網羅的阻害剤のGo6983のフェロトーシス抑制効果を確認できた。さらに、siRNAにてGPX4 KO HepG2のPKCαやδをsiRNAにてノックダウン(KD)したところ、PKCδのKDでフェロトーシスの阻害が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画であったDAGOOHの分析条件の構築については、合成したDAGOOH標品を用いてLC-MS/MS分析による異性体分析条件を最適化できたが、細胞試料からのDAGOOHの抽出方法の構築は現在も検討している。一方で、2年目の計画であったSMSやPKCのisoformの特定については、まずPLOOHを処理したHepG2だけでなくGPX4 KO HepG2を用いてSMSとPKCのフェロトーシスに対する影響を確認したところ、阻害剤で同様の結果が得られた。そこで、GPX4 KO HepG2のSMSやPKCをsiRNAによるKDしたところ、PKCδのKDがフェロトーシスを抑制することを見出した。これらの結果から、計画の進め方に変更があったものの、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き細胞試料からのDAGOOH抽出条件の改善と、SMSやPKCのisoformの特定を進めていく。DAGOOHの抽出条件の構築は、Folch法による総脂質の抽出と、固相抽出による精製方法(中性脂質の分画と、トリグリセリドやコレステロールエステルの除去)を検討していく。条件を最適化した後に、HepG2 (野生型やGPX4 KO) へPLOOHを処理し、DAGOOHへの代謝を評価する。Isoformの特定は、引き続きsiRNAで実施していくと共に、それぞれの酵素のテトラサイクリン発現誘導システムを用いた過剰発現株を作成して、フェロトーシスへの影響をより詳細に解析していく。
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Causes of Carryover |
東海大学医学部から静岡大学農学部への職場の変更やそれに伴う実験室の片づけ、引っ越し、新しい職場での部屋の立ち上げなど、環境整備が必要であった。それに伴い、研究へのエフォートが減少したことが大きな要因である。令和6年度は、令和5年度にて検討中であったDAGOOHの抽出条件の構築に特に注力して研究を進める。
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