2023 Fiscal Year Research-status Report
ベージュ脂肪細胞活性化能を有する食品由来微生物および腸内細菌の探索
Project/Area Number |
23K13903
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川原崎 聡子 京都大学, 農学研究科, 特定研究員 (60965169)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | UCP1 / プロバイオティクス / ポストバイオティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では微生物由来代謝産物に着目し、抗肥満分子として注目されている脱共役タンパク質1 (UCP1) の発現を増強させる微生物由来代謝産物を独自に樹立したUCP1レポーター脂肪細胞株を用いて探索し、抗肥満効果を検証することを目的として各種検討を行っている。 本年度は、樹立したUCP1レポーター脂肪細胞株を用いたスクリーニングの予備検討として小規模のサンプルの評価を行った。微生物の培養上清および菌体抽出物を培地で希釈してレポーター脂肪細胞株に添加し、翌日培養上清のルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、1種の微生物培養上清で処理した細胞において培養上清のルシフェラーゼ活性が有意に上昇した。活性上昇を示した微生物の培養上清を褐色脂肪組織由来脂肪細胞株に対して処理した結果、Ucp1 mRNA発現量は有意な変化を示さなかった。短時間の処理でも同様にUcp1 mRNA発現量は変化を示さなかった。この一因として、ルシフェラーゼ活性測定に用いた微生物培養上清と遺伝子発現測定に用いた微生物培養上清は異なるロットのものを用いていることが考えられた。実際に、遺伝子発現測定に用いたロットの微生物培養上清をレポーター脂肪細胞株を用いて評価したところ、ルシフェラーゼ活性の上昇は認められなかった。これらの結果から、微生物培養上清および抽出物を評価する際にはロット間差にも注意を払うべきであると考えられ、より大規模なスクリーニングの際にも1種の微生物に対して複数ロットを用いて評価を行うなど、ロット間差の影響を考慮して微生物由来代謝産物の効果の検出を目指す必要性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は①UCP1発現誘導能を持つ微生物またはその代謝産物の探索および②見出されたUCP1発現誘導微生物またはその代謝産物のUCP1発現誘導メカニズムの解明への着手の2点を計画していた。 ①に関して、まず小規模での予備検討として数種の微生物の培養上清および菌体抽出物のUCP1転写活性をレポーター脂肪細胞株を用いて評価したが、レポーターアッセイにおいて活性を示したサンプルが褐色脂肪細胞株を用いた遺伝子発現効果を示さなかった。この原因の1つとして、微生物由来サンプル調製時のロット間差が考えられた。その一方、スクリーニング条件についても今回は処理時間を1点のみで行ったため、処理時間についても複数の時点で培養上清を回収するなどより確度の高い評価を目指す必要があると考えられた。また、樹立したUCP1レポーター脂肪細胞株を用いたルシフェラーゼ活性評価に微生物由来培養上清が想定外の影響を示している可能性も排除できない。以上のことから、大規模な評価を行う前にサンプル調製条件や評価プロトコルを最適化する必要があると判断した。加えて、スクリーニングに用いる大規模微生物ライブラリーの調整にも時間を要しているため、本年度は大規模なスクリーニング前の予備検討を行うにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、まずスクリーニングの条件を定めるため、2023年度よりも対象数を増やして評価を行い、実際にルシフェラーゼ活性測定の結果と遺伝子発現測定の結果が一致するかを検証するとともに、ルシフェラーゼ活性測定のためにどの時点で回収するのが最適かなどの測定プロトコルの見直しを行う。これらの検討を元に、微生物ライブラリーの調整が完了し次第予定していた大規模スクリーニングおよびUCP1発現誘導メカニズムの検討を行う。またスクリーニング結果が得られ次第、肥満モデル動物などを用いることで可能な限り迅速に抗肥満効果の検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は大規模スクリーニングを行う前の予備検討に止まったため、当初予定していた遺伝子発現解析や代謝産物解析を行わなかったため、残金を2024年度に繰り越した。2024年度には上記解析も含めて実験を進め、必要に応じてメタゲノム解析などを取り入れることで研究成果をより高度なものにしたいと考えている。
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