2023 Fiscal Year Research-status Report
植物の栄養環境に応じた花成と代謝の協調的制御機構の解明
Project/Area Number |
23K13921
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
眞木 美帆 北海道大学, 理学研究院, 特任助教 (20967749)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 窒素欠乏 / 代謝 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,植物が栄養状態に応じて花成と代謝を協調的に制御する分子機構の解明を目指している。これまでの申請者らの研究から,窒素欠乏による花成誘導制御因子として転写因子FBH4を同定し,FBH4のリン酸化状態が重要なシグナルとなっていることが分かった。さらに,FBH4が窒素欠乏に応答した栄養輸送体や代謝酵素などの遺伝子発現制御にも重要であることを見出している。このことは,FBH4が窒素欠乏時に花成と代謝の両方を制御する重要な因子であることを示唆する。そこで,FBH4の機能に着目した以下の3つの解析を実施することで,植物の窒素栄養に応じた花成と代謝の協調的制御機構を明らかにする。 1)窒素栄養に応じてFBH4が制御する遺伝子発現変動解析 2)窒素栄養に応じたリン酸化とそれによるFBH4機能制御機構の解析 3)窒素栄養に応じてFBH4が制御する代謝物変動解析 本年度は,主に1)と2)の解析を実施した。RNA-seq解析から,FBH4が窒素欠乏時に花成制御因子だけでなく,代謝制御に関わる遺伝子群を大規模に制御していることが分かった。またRNA-seqとChIP-seq解析から,窒素量に応じたFBH4の直接的な標的遺伝子の候補を得た。そのうちいくつかの遺伝子に関して,レポーターアッセイなどの個別解析により,FBH4が標的遺伝子のプロモーター領域に結合することを確認した。また,IPや,ChIPを元にしたクロマチン関連タンパク質精製法を用いたプロテオーム解析から,FBH4の機能制御に関わる新規相互作用因子を同定した。これら因子について,FBH4リン酸化状態との関係など,窒素栄養に応じた詳細な機能を解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,本研究で計画していた3つの課題のうち,研究課題1と2でコアとなっていた網羅的解析をすべて実施することができた。課題1について,RNA-seqやChIP-seq解析から,これまで不明であった窒素欠乏時に転写因子FBH4が制御する遺伝子群を同定し,FBH4が窒素栄養に応じて花成と代謝制御に関わる遺伝子を大規模に制御していることが見えてきた。また,課題2について,これまで動物でのみ確立されていたChIP-SICAP-MS解析の植物での実験系確立に成功し,クロマチン上でFBH4が形成する複合体の構成因子に関する情報を得ることができた。この情報は,窒素栄養に応じたリン酸化による転写因子FBH4の機能調節機構を理解する上で非常に重要な手がかりとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度得たFBH4の直接的な標的遺伝子や相互作用因子の情報をもとに,窒素欠乏時のFBH4による代謝制御の詳細や,窒素栄養に応じたリン酸化によるFBH4機能調節の分子機構についてさらなる解析を行う。また,課題3の窒素栄養に応じてFBH4が制御する代謝物変動解析を実施し,窒素欠乏応答性花成に伴う代謝や栄養輸送活性変化におけるFBH4の生理機能を明らかにする。以上より,窒素欠乏時のFBH4による花成と代謝の協調的制御機構の解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
発注元の都合により,次年度に予定しているメタボローム解析のサンプル調製に必要である高額な消耗品と試薬の年度内納品が難しかったため。次年度の使用計画としては,上記解析に必要な消耗品と試薬を購入する。
|