2023 Fiscal Year Research-status Report
イネの茎部内における同化産物の分配・利用機構の解明に基づく収量性の改良
Project/Area Number |
23K13935
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 侑 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10964877)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | イネ / 収量安定性 / 登熟 / 非構造性炭水化物 / 茎部 / QTL解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
出穂前にイネの茎部に蓄積される澱粉や糖などの非構造性炭水化物(NSC)は,子実の登熟を支える重要な炭素源である.また,登熟期間が不良環境である場合,出穂前に茎部に蓄積したNSCは不足分を補償する効果を示すことから,茎部NSC蓄積は収量安定性に関わる重要な形質である.一方で,茎部NSC蓄積は,環境要因の影響を強く受けるため,遺伝要因を特定することが困難であり,これまでに検出されたQTLは多くない.そこで本研究では,茎部NSC蓄積と関係性が強く,環境要因の影響を受けにくい形質を新たに見つけ出し,その形質を対象にQTL解析を行うことで,茎部NSC蓄積の遺伝要因の特定を目指す. 初年度は,茎部NSCの蓄積特性が異なる品種をかけあわせ作成した分離集団を用い,茎部NSC蓄積と茎部の形態形質との関係性について解析した.その結果,稈を構成する節間の割合は茎部NSC蓄積と関係性が強いことを明らかにした.また,稈内の節間割合は年次間の変動が小さく,環境要因の影響を受けにくい形質であることが示唆された. 各節間の形態形質および稈のNSC蓄積量についてQTL解析を行ったところ,いくつかQTLが検出されたため,現在当該QTLを対象とした準同質遺伝子系統(NIL)の作出を進めている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は,6月頭の豪雨で水田が約2週間の冠水状態になってしまい,その影響で枯死する系統がいくつも発生したため,試験を断念せざるを得なかった.そのため,初年度は2022年度に行った圃場試験の解析に専念し,得られた結果をもとに温室内でのNILの作成に注力した.
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は,前年度に行う予定であった圃場試験を実施し,QTL解析の年次反復を取得する.また,現在QTL解析で利用している連鎖地図には,作成した世代と表現型の解析を行っている世代とで数世代のずれがあるため,マーカーの再整備を行う.現在作成中のNILについては,引き続き戻し交配,および種子増殖を行い,次年度に圃場に展開できる量の種子を確保する.
|
Causes of Carryover |
初年度は,実施予定であった圃場試験が,6月頭の豪雨の影響で行うことができなかった.そのため,サンプリング時の費用やサンプルの成分分析でかかる費用を翌年に繰り越す必要性が生じた.本年度は,前年度に行う予定であったサンプリング時の消耗品や人件費,およびサンプルの成分分析時に利用する測定キットや各種試薬に研究費を利用する予定である.
|