2023 Fiscal Year Research-status Report
メタゲノム情報を糸口とした新奇バイオコントロール細菌の発掘-持続的防除技術の創生
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23K13959
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
富田 駿 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00909343)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 生物的防除 / 非リボソーム型ペプチド / NRPS / メタゲノム / バイオコントロールエージェント / 活性汚泥 / 粘液細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、環境由来メタゲノム情報から新奇NRPS候補遺伝子を抽出し、菌株保存機関に登録されている微生物株の公開ゲノム情報に基づき候補遺伝子を有する微生物株を選抜してその生理活性を評価するという戦略により、環境中に埋もれた新奇バイオコントロールエージェント(BCA) の探索をおこなった。都市下水処理施設由来の活性汚泥のショットガンメタゲノム配列から再構築した180 個のドラフトゲノム(Bin)のantiSMASH 解析により、データベースに登録のない64 個の新奇NRPS を発見した。NRPSを保有するBinの門レベルでの分類学的分類については、上位3門としてProteobacteria、Myxococcota 、Bacteroidotaに属していた。その中で、まずProteobacteria のBurkholderiales目に分類された2つのBinが保有する新規NRPSに着目した。本NRPSをBlastpによる相同性検索を行い、その相同性が上位の菌株のNRPSアミノ酸配列を用いて、NaPDoSにより既知NRPSも含めた分子進化系統樹を作製した。その結果、得られたBinの新規NRPS遺伝子とその近縁の遺伝子群が単系統群を形成した。本系統群のうち、国内菌株保存機関に登録されている3株を用いて灰色かび病菌に対する抗真菌活性を評価したところ、全株で活性を確認できた。 さらに、上記メタゲノム解析によりNRPSを豊富に保有することが明らかになったMyxococcota門細菌(粘液細菌)の分離に取り組み、活性汚泥からは初となる粘液細菌 Corallococcus sp. KH5-1, NO1株の分離に成功した。また、KH5-1株、NO1株の培養液抽出物は、一部の植物病原菌に対して抗菌活性を有することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究実施計画に従い、「新奇NRPを生合成するBCAのメタゲノム情報からの発掘」「新奇BCA候補株のトマト病原菌に対する生育阻害活性評価」を実施した。「新奇NRPを生合成するBCAのメタゲノム情報からの発掘」においては、活性汚泥のショットガンメタゲノム配列から再構築した180 個のドラフトゲノム(Bin)のantiSMASH 解析から、データベースに登録のない64 個の新奇NRPS を発見した。また、「新奇BCA候補株のトマト病原菌に対する生育阻害活性評価」においては、見出した新奇NRPSのうち、Proteobacteria のBurkholderiales目に分類された2つのBinが保有する新規NRPSに着目し、これらのBinと相同性の高い既存の分離培養株を取得し、それらの灰色かび病に対する生育阻害活性を確認することができた。また、新奇NRPSを豊富にもつことが推定された粘液細菌群の分離培養にも成功し、これら分離株の植物病原菌に対する抗菌活性を確認できた。 以上の点から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「新奇NRPを生合成するBCAのメタゲノム情報からの発掘」「新奇BCA候補株のトマト病原菌に対する生育阻害活性評価」を引き続き実施しさらなるNRP産生BCA候補株を探索するとともに、得られたBCA候補株について、「トマト苗への新奇BCA候補株接種試験による発病抑制効果の検証」「新奇NRPの生成および化学構造の同定」を実施することで、新たな植物病害防除技術の創生を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度には、粘液細菌の純粋分離培養に想定以上に時間を要したため、当初予定していた試料採取やショットガンシーケンス解析の一部を実施出来なかった。次年度は、試料採取およびシーケンス解析を病害抑制効果の検証と並行して実施する予定である。
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