2023 Fiscal Year Research-status Report
環境DNA分析に基づく外来種による群集・遺伝子レベルでの影響評価手法の開発と実践
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23K13967
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 冴月 京都大学, 情報学研究科, 助教 (80867656)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 外来種 / 環境DNA / メタバーコーディング / 魚類群集解析 / 胃内容解析 / コウライオヤニラミ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、宮崎県大淀川水系における外来種コウライオヤニラミの分布状況の把握と、本種が魚類群集構造に与える影響の評価に取り組んだ。大淀川ダムより上流域に55地点の調査地を設定し、環境DNA分析のための採水調査を実施した。得られた環境DNA試料は、魚類環境DNA定量メタバーコーディングに供し、コウライオヤニラミおよびその他生息する魚類のDNA濃度を推定した。その結果、コウライオヤニラミの環境DNAが調査を行った大淀川ダムより上流のほぼ全域から検出され、本種が2017年の侵入以来、本流を通じて水系内の広い範囲に分布を拡大していることが明らかとなった。また、得られた魚類相の定量データを用いた群集解析では、コウライオヤニラミの在・不在、流域区分(上・中・下流)、およびこれらの交互作用が魚類群集構造に有意な影響を与えていることが示唆された。さらに、各魚種とコウライオヤニラミのDNA濃度を1:1で比較し、dHSIC(distance Hilbert-Schmidt Independence Criterion)により非線形関係を含む対の関係を評価したところ、9種において負の有意な関係が見いだされた。 大淀川支流の沖水川にて個体を捕獲し、胃内容調査を実施したところ、複数の魚類やエビ類、水生昆虫などが検出された。魚類については、個別にDNAを抽出し、MiFishプライマー(Miya et al. 2015)を用いた種判別を行った。その結果、環境DNA分析でも負の影響が示唆されたカマツカやオイカワなどが検出され、これらの種が捕食の影響を受けていることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた野外調査および環境DNA分析による群集解析を完遂することができた。また、胃内容解析は当初の計画に含まれていなかったが、協力者の参画により実現することができ、環境DNA分析の結果を補強する結果が得られた。さらに、コウライオヤニラミの環境DNAが研究計画時における想定よりも非常に広範囲から高濃度で検出され、本種の急激な分布拡大が示唆された。そのため、早急に本種の侵略性の高さについて警鐘を鳴らす必要性を感じ、初年度の成果を論文にまとめ、国際誌に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
コウライオヤニラミの分布拡大モニタリングおよび、他水系への侵入監視のため、初年度に調査を行った55地点、および周辺の他水系も含め新たに設定する50地点の計105地点での環境DNA調査を実施する。また、コウライオヤニラミの遺伝的多様性についても環境DNA分析を用いて検討を行う。さらに、本種の生息適地モデリングにも着手し、九州全域における定着リスクについても検討を行う。
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Causes of Carryover |
分子実験時に使用する試薬構成を少し変更し、当初の想定よりも少ない試薬で必要な実験を完遂することができたため。試薬は使用期限があるため、翌年度のために買いだめをするよりも、予算を繰り越した方がいいと判断した。 繰り越した予算は、翌年度分として請求した助成金と合わせ、試薬購入やシーケンス外注費用として使用予定である。
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