2023 Fiscal Year Research-status Report
木材腐朽菌の多様性が枯死木に生息する昆虫群集に与える影響
Project/Area Number |
23K13985
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小林 卓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (10934242)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 木材腐朽菌 / 昆虫 / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は羊ヶ丘実験林(北海道札幌市)内の落葉広葉樹林に調査区を設置し、実施している。本年度は、羊ヶ丘実験林において枯死木や木材腐朽菌の子実体から菌糸を採取し、実験室で分離培養を行なった。培養菌糸からDNAを抽出し、ITS領域を用いたDNAバーコーディングにより枯死材性菌類を同定した。これらの菌類による木材の分解特性を評価するため、コナラ木片に菌糸を接種して12週間の腐朽試験を行った。菌種により材の分解能力は大きく異なり、ほとんど分解能力を示さない種から、2割以上の重量減少を示す菌種がみられた。腐朽試験の結果に加え、文献調査から得られた各菌種の腐朽様式(白色腐朽、褐色腐朽等)の情報を総合し、野外操作実験に用いる4菌種の選定を行なった。野外操作実験の準備として、これらの菌類を滅菌したコナラの丸太に接種し、実験室内での培養を開始した。また調査区に枯死木と衝突板トラップを設置し、枯死木性の昆虫群集の調査を行った。採集した昆虫については形態とDNA情報を用いた同定を行うため、非破壊的な手法でのDNA抽出をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画していた調査区での菌類の採集と実験に用いる種の選定、野外操作実験に向けた丸太での培養を予定通り行うことができた。また、予定していた野外における枯死木性昆虫の調査を開始することができた。採集した昆虫からの非破壊的に抽出したDNAについては順次分析を開始しており、次年度にかけて次世代シーケンサーを用いたDNAメタバーコーディングを予定している。以上のことから、計画は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)木材腐朽菌類の種により枯死木の特性は異なるかを明らかにするため、実験室で各菌種に腐朽させた材の分析を行う。 2)枯死材性昆虫が特定の菌種による腐朽材への選好性を示すかを明らかにするため、異なる腐朽菌類に腐朽させた丸太を調査区に設置し、飛来する昆虫類の調査を行う。採集した昆虫から非破壊的にDNAを抽出し、標本の形態観察とDNAメタバーコーディングにより群集構造を明らかにする。
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Causes of Carryover |
トラップにより採集した昆虫の処理において作業補助者を雇用して人件費を支出する予定であったが、実験作業の都合上、一部の作業を翌年度に行うこととした。翌年度分として請求した助成金で作業補助者の人件費を支出する予定である。
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