2023 Fiscal Year Research-status Report
Estimation of carbon fixation by reforestation in landslide scars based on representative concentration pathways scenarios
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23K13987
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
經隆 悠 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (60836427)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 斜面崩壊 / 土石流 / 土砂災害 / 炭素固定 / 再造林 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動シナリオの違いが将来の斜面崩壊の発生頻度に及ぼす影響を明らかにするため,2種類の全球気候モデル(MIROC5・MRI-CGCM3)とIPCC第5次報告書に準拠した2通りの温暖化シナリオ(RCP2.6・RCP8.5)を組み合わせた4通りの降雨量の推定値を使用して,各モデルとシナリオにおける2100年までの斜面崩壊発生危険降雨の発生する回数と時期を比較した。将来の72時間雨量の推定値が,現在気候下における100年に一度の確率雨量に達した場合に,その降雨を斜面崩壊発生危険降雨と判定した。降雨の推定値が斜面崩壊発生危険降雨に達したと判定された日を,斜面崩壊発生危険日と定義した。その結果,どちらの全球気候モデルにおいても,RCP2.6よりも温暖化が進むシナリオであるRCP8.5において,より多くの斜面崩壊発生危険日が発生することが明らかになった。加えて,RCP8.5では,どちらのモデルでも斜面崩壊発生危険日が2060年以降に増加し,最大3地域で同時期に斜面崩壊が発生する危険性があることが予測された。これらの結果は,温暖化が深刻化するほど,斜面崩壊の発生危険性が特に2060年代以降に増加することを示唆しており,気候変動が将来の土砂災害発生リスクに及ぼす影響の評価に貢献する。さらに,これらの結果に基づいて,崩壊跡地の再造林による若齢林の再生がもたらす炭素固定の増加を評価するために必要な,2100年までの斜面崩壊の発生頻度の推定結果を取りまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに,全球気候モデルの降雨量予測値に基づいて,将来の温暖化シナリオ毎の斜面崩壊発生危険降雨の発生頻度が推定できた。当初は,特定の対象地での推定を予定していたが,確率雨量の解析に近年開発された新手法を用いることで,日本全土の広域評価が実現できた。このように,想定以上の成果が得られており,おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
将来の斜面崩壊発生危険降雨の推定結果を論文として取りまとめる。また,過去の斜面崩壊による炭素流出量を推定するための現地データの整理を進める。
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Causes of Carryover |
繰り越し分は,今年度の成果を取りまとめた論文の英文校閲および投稿料・オープンアクセス費用として使用する予定であった。今年度の成果を取りまとめた論文は既に投稿中であるが,査読に想定よりも時間がかかっており,今年度中の受理と支払いが困難となったため,必要な経費として次年度に繰り越すこととした。この次年度使用額は,予定通りに論文の英文校閲および投稿料・オープンアクセス費用として使用する計画である。
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