2023 Fiscal Year Research-status Report
褐色腐朽菌の非酵素的木材分解反応におけるシトクロムP450によるトリガー分子の生成
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23K13997
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
梅澤 究 近畿大学, 農学部, 講師 (70802544)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 木材腐朽菌 / 褐色腐朽菌 / 木質バイオマス / シトクロムP450 / 錯体介在型フェントン反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐色腐朽菌の木材分解機構は、Fe2+と過酸化水素によるフェントン反応で生成される水酸化ラジカルが木材細胞壁を酸化的に分解するという非酵素的な分解反応であると考えられており、そのユニークな木材分解機構は木質バイオマス利用への応用の観点から注目される。この非酵素的反応において、木材細胞壁内にはFe2+を供給する物質としてシュウ酸が提示されているが、菌体外にシュウ酸を蓄積しない褐色腐朽菌も存在することから、シュウ酸のみではこの反応を説明できない。本研究では褐色腐朽菌の持つシトクロムP450(CYP)が、鉄を可溶化しフェントン反応に供給する低分子化合物を生成すると予想し、褐色腐朽モデル菌Gloeophyllum trabeumが持つCYPの機能解析を行い、CYPが生成する褐色腐朽反応のトリガー分子の同定を試みる。 本年度は、G. trabeumの有するCYP遺伝子およびCYPの活性発現に必要なシトクロムP450還元酵素(CPR)の遺伝子の配列を決定した。セロビオースを単一炭素源とした合成培地で振とう培養したG. trabeumからmRNAを抽出し、それを逆転写して合成したcDNAを用いて、目的遺伝子配列を増幅した。得られた遺伝子配列をCYP遺伝子1種 + CPR遺伝子となるように酵母菌Pichia pastorisの発現用プラスミドに挿入し、CYP活性発現用のプラスミドを構築した。これにより、G. trabeumのCYP活性をP. pastorisにて発現させる基盤が構築された。次年度の酵母CYP発現株の作出により、得られたCYP発現株を用いてCYP活性を測定することで、CYPにより生成される褐色腐朽反応のトリガー分子の候補が発見されることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は酵母菌でのCYP発現株の作出と、菌体懸濁液のCO差スペクトルを用いた高発現株の選抜までを行う予定であったが、酵母菌への遺伝子導入の途中までしか実験を進めることができなかった。次年度なるべく早急にこれらを済ませることで、計画の遅れを取り戻せるように努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は酵母菌でのCYP発現株の作出と、菌体懸濁液のCO差スペクトルを用いた高発現株の選抜をまず済ませる。同時に、G. trabeumの木材培養時の代謝産物を抽出し、メタボローム解析に供することで、代謝産物中の鉄還元分子のスクリーニングを行う。これらの結果を受けて、CYP発現株を用いた鉄還元物質の生成実験を行い、鉄還元物質の生性能を有するCYPのスクリーニングに進む予定である。
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Causes of Carryover |
研究課題の進捗がやや遅れており、CYP高発現株の選抜まで進まなかったために、その実験に必要となる実験試薬の分の予算が残った。このため、この残額は次年度にこれらの実験を行う際に使用する予定である。
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