2023 Fiscal Year Research-status Report
An Empirical Study on Existence and Effectiveness of Stakeholder-oriented Farm Businesses in Less-favoured Areas in Japan
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23K14032
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小川 景司 神戸大学, 農学研究科, 助教 (80964006)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 中山間地域 / ステークホルダー型経営 / 大規模水田作経営 / 土地利用型農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去に代表者が実施したアンケート調査結果を用いた定量分析、および、年度中に実施した事例調査をもとに、中山間地域において、地域のSH(ステークホルダー)と相互補完関係を形成しつつ経営を発展させるSH型農業経営を捉えるための、分析枠組みと判別指標を検討した。 まず対象とするSHの範囲について、農業経営が関わるSHは広範であるが、地域との相互関係に限れば、地権者、地権者組織、自治会組織、非農家住民、地域づくり組織がその中心となると考えられる。また、農業経営とSHとの相互補完関係を捉えるには、両者がそれぞれどのような価値を生み出し、提供し合っているか、分析する必要がある。そこで、これらのSHと農業経営との関係構築について、特に相互の価値提供の観点からSH型農業経営の実態を整理し、分析枠組みと判別指標を検討することとした。 今年度は、地域農業の維持と環境保全(生活環境の維持、自然環境の保全)に着目し、SH型農業経営の1類型として、地域の環境保全に取り組む経営がどのような経営成果を得ているか分析し、それが地域農業の維持に及ぼす影響を考察した。アンケート調査の定量分析によれば、地域共同の農業資源管理に取り組む経営では、内部留保と休日の確保が適切になされやすく、景観の向上に取り組む経営では、人材確保がなされやすく、自然環境に配慮した農業に取り組む経営では、高い付加価値が得られやすかった。これらの結果より、地域の環境保全に取り組むことで、自社の経営成果を高め、地域農業の持続性を高めるSH型農業経営の1つの形が確認できた。また、判別指標として、地域内の農業資源管理組織との協働関係や、地域内の環境保全との関わりを捉えることが有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況はおおむね良好である。計画していた通り、SH型農業経営を捉えるための分析枠組みと判別指標について検討し、環境保全の視点から、1つの理論的仮説を示すことができた。また、限られたデータの中で、実証的な分析結果を示すことができた。さらに、SH型農業経営の1類型の候補として、他出者や移住者など外部人材を取り込んだ農業経営の事業モデルについて、事例分析に着手している。以上の通り、本科研の中で実施する最終的なアンケート調査に向けた準備が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、外部人材を農業経営や地域資源管理、地域づくりに参画させる取り組みを行う事例分析を継続し、SH型農業経営の1類型として実態を整理する。得られた類型と、環境保全を視点とした類型とを統合させ、分析枠組みと判別指標を作成する。それらと、SH理論に基づいた実証分析のレビューを通じて、アンケート調査の設計に取り組む。また、関係機関との調整を行い、アンケート調査の設営に取り組む。
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Causes of Carryover |
計画していた統計ソフトの購入について、既存のソフトで分析が可能であったため、本年度中の購入を見送った。次年度以降、新しい統計ソフトが必要となると想定しているため、計画通り統計ソフトの購入に予算を充てる。
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