2023 Fiscal Year Research-status Report
How can enhanced carbon sequestration in agricultural soils potentially influence soil pore structure?
Project/Area Number |
23K14042
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
福桝 純平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 研究員 (50967297)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 土壌炭素 / 土壌間隙構造 / 土壌物理性 / 統計モデル / 圃場スケール |
Outline of Annual Research Achievements |
黒ボク土壌において炭素投入量を操作する圃場実験を新規に開始した。まず開始前の初期土壌を採取し、対象圃場における土壌炭素量および土壌物理性の空間変動性を調べた。その結果、対象圃場において、土壌炭素量に高い空間変動性がみられたものの、当初の予想に反して、土壌保水性と仮比重は土壌炭素量と相関していない結果が得られた。初期土壌採取後に、裸地区および植栽区、植栽区には化学肥料施用区および堆肥施用区のプロットをそれぞれ3連で設置し、大豆および大麦の二毛作栽培を行った。大豆収穫後の不攪乱土壌の採取は完了したので、再び保水性および透水性を測定し、初期土壌の測定結果からの変動を調べる予定である。土壌炭素量に関しても、大豆栽培直後に土壌を採取し、測定が完了している。その結果、短期間の土壌管理が及ぼす土壌炭素量への影響は限定的であった。また、隣接する長期連用圃場において、比重分画法を用いて土壌炭素形態を調べたところ、対象圃場において有機物施用により増加する土壌炭素画分は主に粗大有機物画分であり、鉱物結合型画分の炭素量は増加しない傾向が得られた。 もう一つの課題である日本全国の農耕地土壌をカバーしたインベントリーデータを用いた土壌間隙構造と土壌炭素量の解析では、まず土壌保水性から土壌間隙量を計算し、土壌特性との相関関係を調べた。土壌タイプは黒ボク土壌、灰色低地土、赤色土、細黄色土および褐色低地土を対象とした。いずれの土壌タイプにおいても土壌炭素量は仮比重と負の相関を示し、これは既往の研究とも整合的であった。一方、土壌マクロ、メソおよびミクロ間隙量においては、ミクロ間隙量が土壌炭素と正の相関を示し(5つのうち4種の土壌)、これより土壌炭素量の増加は植物利用可能水分量の増加と連動している可能性が示唆された。一方、マクロ間隙量は土壌タイプによって土壌炭素量と異なる相関関係を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圃場実験については無事開始することができ、また順調に土壌サンプルの採取およびその解析を進めることができている。一部の土壌物理性の実験については、測定システムの確立に時間を要したため一部が未完了ではあるものの、測定開始できる準備が整ったため次年度以降は速やかに分析を開始できると考えている。インベントリーデータに関しても、土壌特性と土壌間隙構造の関係に関して土壌タイプごとに解析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
圃場実験を継続し、作物栽培および有機物施用に伴う土壌間隙構造・透水性の変動をとらえる。加えて、対象圃場に隣接する連用圃場や二次林の土壌も採取し、土壌炭素量のレンジが大きい条件下で、土壌間隙構造は土壌炭素量とどのように連動するのかを調べる予定である。また、対象圃場は黒ボク土壌であるため、非黒ボク土壌での土壌炭素ー土壌構造の関係を抑えるために、文献レビューも同時に行い、本圃場試験との比較を進める。 インベントリーデータに関しては、間隙量を算出すると負の値になる等の結果が一部で得られた。そのため、今年度の解析ではまずデータクオリティコントロールを行う。その後、土壌タイプごとに土壌特性から間隙量を推定する統計モデルの作成を進める。
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Causes of Carryover |
昨年度は当初購入を検討していた土壌保水性測定装置を所属機構内の別研究室より譲り受けたため、その分を次年度に繰り越すこととした。 次年度は、引き続き圃場実験を継続するための肥料や土壌分析に関わる消耗品(土壌コアシリンダー等)を購入し、本課題を進めていく予定である。
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