2023 Fiscal Year Research-status Report
アンドロゲンを中心とした精漿産生機構の解明と,それを基盤とした人工精漿開発
Project/Area Number |
23K14069
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梅原 崇 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (60826858)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生殖 / 精漿 / アンドロゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,アンドロゲン依存的な精漿産生臓器である精嚢腺や前立腺の機能を明らかとするため,野生型マウスとアンドロゲンが恒常的に低値であるライディッヒ細胞特異的NRG1欠損マウス,そしてアンドロゲン受容体の抑制剤であるフルタマイドを連続投与したマウスの比較解析を実施した.マウスでは射出精液を回収することが難しいため,精嚢腺や前立腺を採取し内部に含まれる液成分を擬似精漿として解析を行った.アンドロゲン濃度が高い擬似精漿において,精子が高い直線運動を示すことは本研究の開始時点で既に明らかとなっていたが,その誘導因子を明らかとするため,質量分析法を用いて内容因子の比較を行った.その結果,血中アンドロゲン濃度と擬似精漿中の脂質やクレアチン濃度が正の相関を示すこと,反対に血中アンドロゲン濃度と擬似精漿中の酸化ストレスマーカーである8OHdG濃度は負の相関を示すことが明らかとなった.このアンドロゲン標的因子の重要性について,脂質では特にコレステロールが精子細胞膜のみならずミトコンドリア膜の安定化を促し,精子機能を改善すること,擬似精漿中に含まれるオレイン酸が栄養源となって精子運動性を高めることを見出した.また,クレアチンはマウス精子において精子の運動性を向上させることが明らかとなっている.したがって,アンドロゲンが精漿成分を制御し,精子運動を制御していることが本研究より見出された.さらに,脂質合成を促すACLYが精嚢腺上皮細胞で発現し,アンドロゲン依存的に制御されていることや,クレアチン合成酵素遺伝子の発現が精嚢腺で高値であることも見出し,アンドロゲンによる精漿機能を高める主要臓器が精嚢腺,特に上皮細胞であることも明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に実施する計画であった“アンドロゲンの標的因子を探索すること”と“アンドロゲンの標的臓器を同定すること”という2つの目標が達成された.さらに,本年度に見出したアンドロゲンとクレアチンの関係から,クレアチンの副産物として産生されるオルニチンやその周辺因子が精漿中に含まれ,重要な役割を担っている可能性も見えつつあり,想定通りの進展をしていると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
想定通りに進展していると共に,新しい候補因子も見えてきたことから,それらの合成機構,役割の探索を進めていくと共に,マウスの基礎研究成果を産業家畜であるブタに展開するため,ブタ精漿を用いた研究も行っていく計画である.そして,マウス・ブタの比較解析から抽出される多胎動物の精漿に共通する重要因子を見出し,その機能性を評価していく.
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