2023 Fiscal Year Research-status Report
ウシ胚における低温傷害の発生機序解明と低温保存技術への応用
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23K14071
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
藤井 貴志 岩手大学, 農学部, 准教授 (60609105)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ウシ / 胚 / 低温保存 / 低温傷害 / 微小管 / ミトコンドリア / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、ウシ胚における低温(4℃)傷害の発生機序を明らかにすることを目的に、体外受精(IVF)由来ウシ低温保存胚の保存-培養後の生存性を調査し、新鮮胚および低温保存胚における微小管の構成タンパク質であるβ-tubulin性状およびリソソーム内に存在するタンパク質分解酵素の一つであるカテプシンBの活性を比較解析した。3日間および7日間低温保存したウシIVF胚の24時間培養後の生存率は、それぞれ100%(21/21)および68.8%(22/32)であり、透明帯からの脱出率はそれぞれ33.3%(7/21)および12.5%(4/32)であった。また、新鮮および7日間低温保存したIVF胚におけるβ-tubulinの蛍光免疫染色を実施したところ、低温保存胚では、β-tubulinの蛍光シグナルの減弱が認められ、微小管の変性が起こっていることが示唆された。さらに7日間低温保存したIVF胚は新鮮IVF胚と比較して、カテプシンBの活性が高く、低温ストレスによりリソソームからの不必要なタンパク質分解酵素の漏出が起こっていることが示唆された。以上のことから、低温ストレスがリソソームからの過剰なタンパク質分解酵素の漏出を引き起こし、それがウシIVF胚の微小管変性と関連している可能性が示された。また、アポトーシスおよびタンパク質品質管理に関わる遺伝子群のmRNA発現量を定量的RT-PCR法により解析するための実験系を確立するとともに、新鮮および低温保存したIVF胚のRNAサンプルを蓄積し、現在解析を実施しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は当研究計画の初年度であったが、研究代表者の所属が2023年6月から変更になり、新たな所属先での研究環境の立ち上げに時間を要したため、研究の進捗はやや遅れている。現在は、胚の培養系や低温傷害の評価系等を立ち上げ、研究環境も整いつつあるため、今後の試験は予定通り実施できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、低温保存胚における活性酸素種の産生、アポトーシスの発生状況およびアポトーシスやタンパク質品質管理に関わる遺伝子群のmRNA発現動態を明らかにし、ウシ胚における低温傷害の発生機序についてより詳細に検討する。また、低温保存液への抗酸化剤およびタンパク質分解酵素阻害剤の添加が、ウシ胚の低温傷害に及ぼす影響を解析する。
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Causes of Carryover |
本年度は当研究計画の初年度であったが、研究代表者の所属が2023年6月から変更になり、新たな所属先での研究環境の立ち上げに時間を要したため、当初予定していた一部の実験を実施できず、それら実験に必要な試薬類を購入するための経費に残額が生じた。現在は、研究環境も整いつつあり、繰り越した研究予算を使用して次年度に実験を実施する予定である。
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