2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン修飾に着目したウシ伝染性リンパ腫発症機序解明および予防法の開発
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23K14077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前澤 誠希 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (50951597)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 牛伝染性リンパ腫 / ヒストン修飾 / ウイルス性発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
1.牛伝染性リンパ腫ウイルス感染無症状牛5頭、持続性リンパ球増多症牛7頭および牛伝染性リンパ腫発症牛発症牛3頭の末梢血単核球を収集した。 2.活性化マーカーであるH3K4me3およびH3K27acを用いたChIP-seqにより、牛伝染性リンパ腫ウイルス感染無症状から持続性リンパ球増多症への病態進行には、発がん抑制遺伝子がコードされている領域のH3K4me3およびH3K27ac修飾が外れることによる遺伝子発現不活性化が関与している可能性が示唆された。加えて、持続性リンパ球増多症から牛伝染性リンパ腫発症への病態進行には、細胞分裂関連遺伝子がコードされている領域がH3K4me3およびH3K27ac修飾されることにより、これらの遺伝子が活性化されることが関与している可能性が示唆された。 3.牛伝染性リンパ腫発症に関与するゲノミックな要因としてウシ主要組織適合遺伝子複合体遺伝子に着目し、牛伝染性リンパ腫発症高齢牛と発症若齢牛におけるウシ主要組織適合遺伝子複合体アレルを比較した。その結果、牛伝染性リンパ腫発症若齢牛におけるBoLA-DRB3:1501アレル保有割合は、発症高齢牛の保有割合に比べ有意に高かった。したがって、BoLA-DRB3:1501アレルは伝染性リンパ腫早期発症傾向を有するアレルであると考えられた(Maezawa et al., Vet. Microbiol., 2023)。 4.これまで牛伝染性リンパ腫発症牛より検出されていなかった牛伝染性リンパ腫ウイルスC株により引き起こされた牛伝染性リンパ腫症例に遭遇した(Daiji et al., J. Vet Med. Sci., 2023)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に従い、牛伝染性リンパ腫の各ステージの材料収集およびヒストン修飾解析を主に実施し、次のような結果を得られた。 1.牛伝染性リンパ腫ウイルス感染健常牛から持続性リンパ球増多症への病態進行には免疫活性関連遺伝子やアポトーシス関連遺伝子の活性が下がること、および持続性リンパ球増多症から牛伝染性リンパ腫発症には細胞増殖および代謝に関する遺伝子が活性かすることが示唆された。 2.ウシ主要組織適合遺伝子複合体アレルのうちBoLA-DRB3*1501を保有する牛は、ホルスタイン種および黒毛和種において若齢牛で牛伝染性リンパ腫を発症させる傾向を有することが明らかになった。 3.牛伝染性リンパ腫ウイルスC株により引き起こされた牛伝染性リンパ腫症例に遭遇した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.牛伝染性リンパ腫発症牛のヒストン修飾状況の特徴として、活性化マーカーが細胞増殖および代謝に関する遺伝子近傍のヒストンに付与していることが確認されたが、これらはリンパ腫以外の腫瘍細胞でも観察される特徴であり、腫瘍細胞としての特徴であると考えられる。次年度は牛伝染性リンパ腫発症に関与するヒストン修飾の変化を観察するために、持続性リンパ球増多症から牛伝染性リンパ腫発症までのヒストン修飾状況を経時的に観察する。 2.持続性リンパ球増多症牛におけるクローナリティ異常に着目をし、持続性リンパ球増多症牛において、クローナリティ異常の有無に基づきヒストン修飾状況を比較する。
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