2023 Fiscal Year Research-status Report
犬尿路上皮癌のBRAF/MEK/ABCトランスポーター軸を標的とした抗がん剤耐性機構の解明
Project/Area Number |
23K14078
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
梶 健二朗 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (60884252)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | イヌ尿路上皮癌 / ABCトランスポーター / 薬剤耐性 / BRAF / MEK |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はイヌ尿路上皮癌(cUC)においてBRAF変異が薬剤トランスポーター発現を介して薬剤耐性に及ぼす影響を解明するとともに、BRAF/MEK/ABCトランスポーター軸を標的とした癌の薬剤耐性を克服する新規治療法の構築を目的とする。 まずBRAF野生型の細胞株TCC-shおよびOMTCCとBRAF変異型細胞株Sora、Love、MCTCCにおける薬剤トランスポーターABCB1とABCC1発現を評価したところ、BRAF変異株には遺伝子レベルおよびタンパクレベルでABCB1の発現が認められたが、ABCC1の発現は認められなかった。一方、BRAF野生株ではどちらのトランスポーターも発現が認められなかった。実際にBRAFがABCB1発現に影響を与えているか検討するためにBRAF阻害剤の添加実験を行ったところ、BRAF阻害剤により有意にABCB1発現が減少することが明らかとなった。更にBRAFの下流シグナルであるMEKの阻害剤を用いた実験においても同様な結果が得られた。これらのトランスポーターが薬剤による刺激によって発現が誘導されるか評価するためにABCトランスポーター誘導能があるフェニトインの添加実験を行ったが、BRAF野生株・変異株のどちらにおいてもABCB1およびABCC1の発現には影響を与えなかった。これらのトランスポーターが実際に薬剤の排泄に関与しているか評価するためにカルセインアッセイを実施したところ、BRAF野生株と比較してBRAF変異株ではカルセインの細胞外排泄が促進されていることが確認された。以上の事から、cUCにおいてBRAF変異は恒常的にABCB1発現を誘導しており細胞内からの薬剤排泄を介して薬剤耐性に関与している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の仮説通りの結果が得られており、また本研究は採択以前から予備検討を十分に実施していたこともあり当初の計画通りに研究が遂行されていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
実際に抗がん剤に対する薬剤耐性に関与しているか検討するために、ABCトランスポータの基質となるような抗がん剤を用いて細胞毒性アッセイおよび蛍光アッセイを実施する。さらに、それらの排泄がBRAF阻害およびMEK阻害により変化するか評価する。また、担癌モデルマウスにおいてABCトランスポーターの基質となるような抗がん剤と共にBRAF阻害剤およびMEK阻害剤を併用することで薬剤耐性が抑制されて抗腫瘍効果が増強されるか検討する。 更に、実際の症例においてBRAF変異とABCトランスポーター発現ががん組織において相関しているか評価し、予後や病態に与える影響を評価する。
|
Causes of Carryover |
本年度は当初計画していたよりも順調に研究結果が得られており、余剰な物品購入を行わずに研究を遂行することができた。そのため、生じた余剰金は次年度にBRAF変異とABCトランスポーター発現を繋ぐ新たなシグナル因子の探索を目的とした網羅解析に使用する予定である。
|