2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a simple diagnostic method and novel therapy for improving the prognosis of dog with alimentary lymphoma
Project/Area Number |
23K14087
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
酒居 幸生 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 講師 (90844192)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 消化器型リンパ腫 / 簡易診断法 / 新規治療法 / アミノ酸 / スクリーニング / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
イヌの慢性腸症、低悪性度消化器型リンパ腫、高悪性度消化器型リンパ腫(HGAL)に対して血中アミノ酸濃度を用いた簡易鑑別指標を作成し、その妥当性を検討するために、本年度は消化器疾患に罹患したイヌ71頭から血漿を収集し、アミノ酸分析を行った。 また、イヌHGALに対する新規治療薬候補を探索するために、3種類のイヌHGAL細胞株を用いて薬剤スクリーニングを実施した。各細胞株を1134種類の化合物に曝露させたところ、117種類がいずれかの細胞株、64種類がすべての細胞株に対して生存率を50%以下に低下させた。上記64種類の化合物の中でイヌHGALに対する効果が検討されていないものを調べたところ、例としてベンズイミダゾール系駆虫剤であるアルベンダゾール、オキシベンダゾール、フェンベンダゾール、フルベンダゾールが含まれていた。これらの中で、オキシベンダゾールはより低濃度で各細胞株の生存率を低下させたため、本化合物に着目してin vitro実験を行った。その結果、WSTアッセイにより各細胞株の生存率がオキシベンダゾールの濃度依存性に低下することを確認できた。オキシベンダゾールによる抗腫瘍効果の機序を検討するために、細胞周期解析およびアネキシンアッセイを実施したところ、細胞周期停止(G2/M期停止)およびアポトーシス誘導が示唆された。以上のことから、オキシベンダゾールは従来線虫に対する駆虫剤として利用されるが、イヌHGALに対してin vitroで抗腫瘍効果を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当方の所属研究機関異動により一時的に十分な研究が行えなかったものの、簡易鑑別法の開発については着実に検体を収集し、アミノ酸分析まで行った。新規治療法の開発についても、薬剤スクリーニングを完了し、オキシベンダゾールに着目したin vitro実験まで行うことで、ドラッグリポジショニングによる新規治療戦略を見出した。また、上記の研究成果を第20回日本獣医内科学アカデミー学術大会で口頭発表し、研究アワード(JVM賞)に選ばれた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度も消化器疾患に罹患したイヌから血漿を収集し、アミノ酸分析を続ける。そして、前年度の分析結果と合わせて慢性腸症、低悪性度消化器型リンパ腫、HGALに対する簡易鑑別指標を作成し、その妥当性を検討する。興味深いことに、これまでの検討においてHGAL症例では健康犬や慢性腸症症例に比べて血中グルタミン濃度が著しく低下することを見出したため、2024年度はグルタミン代謝に着目したイヌHGALの病態解析も行い、より効果的な治療法の開発に向けた基礎的知見を得る。また前年度に続けて、薬剤スクリーニングの結果に基づいてイヌHGALに対する各種化合物の効果を検証し、有効な新規治療薬候補を見出す。
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Causes of Carryover |
当方の所属研究機関異動により一時的に十分な研究が行えなかったため、次年度使用額が生じた。当該研究費は、次年度に行う血中アミノ酸分析やイヌHGAL細胞株を用いたin vitro実験にかかる費用として使用する計画である。
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