2023 Fiscal Year Research-status Report
アジアにおける牛伝染性リンパ腫ウイルスのスピルオーバーと適応進化に関する調査研究
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23K14093
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
西角 光平 国立医薬品食品衛生研究所, 衛生微生物部, 研究員 (40974366)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 異種間伝播 / 感染宿主 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、新興感染症の相次ぐ発生が問題となっており、ヒト-家畜-野生動物の間におけるウイルスの異種間伝播(スピルオーバー)は、新しいウイルスを出現させる可能性がある。実際に、酪農・肉用牛産業において深刻な問題を引き起こしている牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)において、アジアで種を越える感染伝播を示唆する事象がみられている。アジアにはウシの野生種や固有種が多く生息しているため、BLVの感染拡大が懸念される。そこで本研究では、BLVの出現背景および宿主域拡大に関する新たな知見を得るために、アジアに生息するウシ固有種に着目してBLVの疫学調査とゲノム解析を進めた。インドネシアに生息するウシ固有種において、リアルタイムPCR法およびNested PCR法によるBLV感染調査を行った結果、BLVに感染する個体を確認した。さらに、NGS解析によるウイルスゲノムの網羅的探索を行い、BLVプロウイルスゲノム配列を取得した。本年度の結果から、新たな感染宿主と思われる動物種の存在が明らかとなり、BLVの感染宿主域は従来の報告よりも広いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アジアに生息するウシ科動物のBLV分子疫学調査について、本年度はインドネシアの固有種におけるリアルタイムPCR法およびNested PCR法によるBLV感染調査を滞りなく実施できている。さらにはNGS解析によるウイルスゲノムの網羅的探索のステップにも進むことができた。本年度の調査により、新たな感染宿主と思われる動物種の存在を確認し、BLVプロウイルスゲノムを得ることができた。以上のことから、本研究課題において重要な成果を出すことができており、進捗状況として概ね順調であると判断した。 その他アジアの固有種については、国外の共同研究機関の移設等で集中的なサンプリングが困難な状況になっていたが、継続的なサンプリングは実施できており、次年度にむけたBLV感染疫学調査の準備も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
アジアに生息するウシ科動物のBLV分子疫学調査について、新たな動物種の調査を開始する。本年度調査を実施した固有種については調査を継続する予定である。得られたウイルス遺伝子配列を用いて、系統進化学的解析を実施し、BLVの進化過程を明らかにしていく。さらには、アジアおよび日本のコウモリのゲノムにBLV様配列が存在することがこれまでの研究で明らかとなっており、コウモリの全ゲノムシーケンスデータを用いたデータ解析を進めていく。最終的には、BLV様配列の取得とゲノム挿入部位(インテグレーションサイト)同定を行い、コウモリ種分岐年代データを基に、外来性BLVの祖先ウイルスがコウモリからウシに伝播した年代を推定する。本研究成果は、アジアにおけるBLVの出現背景および宿主域拡大に関する新たな知見となることが期待される。
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Causes of Carryover |
(理由)国外共同研究機関の移設および本研究代表者の研究機関の異動等の理由から、国外での長期滞在を伴う調査研究の実施が困難な状況になり、余剰金が発生した。また、現地でのサンプリング状況から感染調査の実験系に変更が生じたため、それに必要な試薬・備品費の使用無く、次年度に繰越を行った。 (使用計画)繰越金は、代替となる調査方法を拡充して実施するため、それに必要な一般試薬・消耗品、分子生物学用試薬に使用する。さらに、追加で必用となった実験に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)