2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Programmable RNA Switches Based on Intracellular RNA Editing Mechanisms
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23K14130
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小野 宏晃 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (80908591)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 合成生物学 / RNAセンサー / ナンセンス変異依存mRNA分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の記載する(1)RNAセンサーとなる発現ベクターの作製、(2)提案手法のproof-of-concept (POC)の実証を遂行した。 まず、細胞にRNAセンサーを発現させるために、汎細胞プロモーターの下流にセンサー配列と蛍光タンパク質(mCherry)をタンデムに並べた配列を作製した。ここで、センサー配列は蛍光タンパク質とin-frameなATGを欠いているが、標的RNAが存在するときは内在性のRNA編集によってATGが生成されるようになっている。このRNAセンサーは標的RNAが存在するときだけ、蛍光タンパク質が翻訳されるようになっており、mCherryの蛍光強度によって標的RNAの存在を検出できる。本年度は、Qrfp mature-mRNA配列のセンサーを複数作製した。 次に、上記RNAセンサーのPOC実証を行った。細胞に標的RNAとRNAセンサーを共発現させることで、標的RNAに応じてセンサー下流の蛍光タンパク質が発現するかを確認した。その結果、予想外に標的RNAがない条件でも蛍光タンパク質の発現が強いことが判明した。これは、CUG・GUG・UUGといったnon-AUGコドンからの非典型翻訳による発現漏れを無視できないことが原因と思われる。これを回避するために、non-AUG開始コドンになりうるコドンに変異を入れたが、発現漏れを抑制することはできなかった。 そこで、開始コドンを生成する設計から、終止コドンを除去させる設計に変更した。この設計方法に基づいたRNAセンサーは過去に報告されているが、低レベルの発現漏れがあることが知られている。そこで、内在性のナンセンス変異依存mRNA分解を利用することで、標的RNAが存在しない場合のRNAセンサーを積極的に分解する機構を搭載したRNAセンサーを考案し、現在作製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の主目的は、「バックグラウンドシグナルが極めて低いRNAセンサーを作製すること」であったが、予想外にバックグラウンドが高いRNAセンサーであることが判明した。しかし、計画の一部を変更することによって、より高性能なRNAセンサーの仕組みを着想することができた。現在作製している、RNAセンサーの発現ベクターは、計画変更前に作製していたベクター骨格から容易に作出することが可能であることと、RNAセンサーと標的RNAの発現系は転用可能であることから、研究計画の遅れは最小限にとどめることができている。従って、本研究計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、内在性のナンセンス変異依存mRNA分解を搭載したRNAセンサーの性能をin vitroの培養細胞系で評価する。ここでの主目標は、既存のRNAセンサーのバックグラウンドシグナルよりも低レベルなRNAセンサーにすることである。そのうえで、任意のRNAを検出できる性質(programmability)や内在性のRNAを検出できる性質(high-sensitivity)を確認していく。さらに、ウイルスベクターを用いて動物個体内での動作確認も重要である。ここでは、in vivoのQrfp mRNAに応答して、DREADDシステム(hM3Dq)を発現するRNAセンサーを作製することを目指す。視床下部のQrfp発現神経細胞を刺激するとマウスは休眠状態になることが知られている。この表現型を指標にして、野生型マウスのQrfp神経細胞をRNAセンサーのみを使ってターゲッティングする技術を開発する予定である。
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Causes of Carryover |
遺伝子合成の費用に充てる予定であったが、計画が順調に進行したため、遺伝子合成をせずに目的の遺伝子を得ることができた。そのため、未使用額が発生した。
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