2023 Fiscal Year Research-status Report
小胞体における不良膜タンパク質のリソソーム分解機構の包括的理解と創薬基盤の確立
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23K14143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 裕輝 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任研究員 (50879971)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | TOLLIP / PI3P / 小胞体品質管理 / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の遂行に先駆けて、私たちはこれまで小胞体における新たな膜タンパク質品質管理機構としてTOLLIP依存的リソソーム分解経路の存在を明らかにしていた。これは、小胞体でのフォールディングに失敗して蓄積した様々な不良膜タンパク質が、TOLLIPという細胞質タンパク質に選択的に認識され、リソソーム分解へとターゲティングされるというものである。 この知見を発展させ、本年度においては以下の研究成果が得られた。 1) TOLLIP依存的経路を標的とした疾患治療戦略の提示 私たちは前年度までの研究で、TOLLIPがVAPBやSeipinという小胞体膜タンパク質の神経変性疾患変異体を選択的に認識し、分解に導くことを見出していた。本年度は、このうちSeipinの遺伝性痙性対麻痺変異体を発現する神経系の細胞NSC-34やSH-SY5Yにおいて、TOLLIPはこの変異体の選択的な分解を促進することを見出した。このとき、遺伝性痙性対麻痺の原因として提唱されている小胞体ストレスもTOLLIPにより軽減した。従ってTOLLIPの活性化が、不良膜タンパク質の蓄積を原因とする神経変性疾患の治療戦略となる可能性が示唆された。 2) TOLLIP非依存的経路の制御因子の同定 TOLLIP経路の解析の過程で、TOLLIPに依存せずリソソーム分解される不良膜タンパク質も多数存在することを見出した。その一例であるConnexin50の白内障変異体をモデル基質として用い、この基質のリソソーム分解に必要な因子をゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーニングで探索した。その結果、Connexin50変異体のリソソーム分解を担う、すなわちTOLLIP非依存的リソソーム分解経路を担う制御因子として、様々な小胞体遺伝子が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度までのTOLLIP経路の解析結果および上記1)の成果を報告する論文を、本年度中に国際学術誌へ報告することができ(Hayashi et al., EMBO J, 2023)、さらにTOLLIP非依存的経路の分子メカニズム解析の足掛かりとするためのCRISPRスクリーニングで期待通りリソソーム分解制御因子を多数同定できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の最終年度に当たる令和6年度は、CRISPRスクリーニングの結果に基づき、TOLLIP非依存的経路のリソソーム分解機構を分子レベルで明らかにすることを目指す。さらに解明したTOLLIP非依存的経路の分子メカニズムに基づき、レンズ細胞を用いた実験を通して、Connexin50変異を伴う白内障に対する新たな治療戦略の提唱を目指す。
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Research Products
(5 results)