2023 Fiscal Year Research-status Report
転写特化核の分化過程におけるクロマチン構造の変換機構
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23K14168
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
川口 隆之 基礎生物学研究所, クロマチン制御研究部門, 助教 (40947727)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ゾウリムシ / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ゾウリムシおける、クロマチン構造変換によるエピジェネティック遺伝子発現機構を明らかにすることを目指し、本年度は以下の研究を遂行した。 1)ゾウリムシのゲノムには10個のヒストンH3をコードする遺伝子が存在する。しかし、それぞれのヒストンH3が規定するクロマチン構造やその生体内機能は全く明らかにされていない。これまでの予備的な実験によって有性生殖期に高発現している3個のH3は子孫細胞を生み出すことに重要であることを見出していた。本年度はさらに詳細な解析を行い、それら3個のヒストンH3のノックダウン細胞は減数分裂期に異常を来していることを示唆するデータを得た。また、富栄養状態の細胞で高発現しているヒストンH3に蛍光タグを付加し、細胞内の局在を解析したところ、そのヒストンH3は転写活性を担っている大核にのみ蓄積していることを見出した。さらに、遺伝子ノックダウン法によってそのヒストンH3は富栄養状態の細胞の生育に必要であることを発見した。 2)DNAアデニンメチル化修飾(6mA)は大核特異的に蓄積し、遺伝子の転写開始点の下流のヌクレオソーム間で蓄積していることからヌクレオソーム動態や転写の制御機構に関与することが示唆されている。本研究では6mAのヌクレオソーム動態や転写への関与を見出すため、6mA結合因子の同定及び機能解析を行う。本年度は6mA結合因子の同定を行うための核精製の条件の改良を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにゾウリムシの詳細なクロマチン構造やその機能はほとんど明らかにされていなかった。一方で、本研究ではそれぞれのヒストンH3が富栄養状態の細胞や有性生殖の過程で重要な役割を果たしていることを明らかにすることに成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に解析を終えていないヒストンH3については、引き続き細胞内の局在を明らかにする。また、クロマチン免疫沈降法及びDNAシークエンス法によってそれぞれのヒストンH3のゲノム上での局在を解析する。6mA結合因子の探索については、改良した核精製法によって6mAプルダウン法の検討を行う。
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Causes of Carryover |
DNAマイクロインジェクション法の至適条件の検討に時間がかかってしまったため、当初予定していた計画の一部を次年度に繰り越すこととした。
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