2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K14184
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
村上 光 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (50963518)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / リン脂質 / 膜張力 / 骨格筋衛星細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞分裂は生命の根源となる細胞現象であり、その分子メカニズムが先行研究により明らかにされてきた中、近年では緻密な分裂様式に注目が集まっている。例えば、骨格筋を構成する筋線維上に存在する筋幹細胞(筋衛星細胞)は、筋損傷に応答して活性化した後に細胞周期を開始し、分化した筋芽細胞を生み出す分裂、ならびに未分化状態の幹細胞を生み出す分裂の2つの分裂様式(非対称分裂)により骨格筋を構成する筋線維の再生機構に寄与している。本研究者はこの筋衛星細胞における分裂制御メカニズムを明らかにするために、自身の研究背景に基づき、細胞を構成する細胞膜とその物理化学的な性質に着目した研究を進めている。 当該年度では、細胞膜のリン脂質二重層構造に着目した。培養細胞をモデルとした先行研究では、細胞分裂時に脂質二重層間におけるリン脂質分子の局在(配向性)が変化し細胞内シグナル伝達に関与することが報告されている。そこで、マウス骨格筋より単離した筋衛星細胞において、通常細胞膜の細胞質側に局在するホスファチジルセリン(PS)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)を蛍光標識された脂質結合分子により可視化する系を構築した(PS: Annexin V、PE: SA-Ro(J. Cell Biol. 2000))。これらを細胞外から適用した際に細胞膜上にて蛍光が検出される場合、膜リン脂質の配向性が変化したことが示される。また、蛍光性小分子Flipper-TR(Nat. Chem. 2018)を用いた膜張力評価法の構築にも成功した。 現在、上記の実験系により単離筋衛星細胞の分裂過程における解析を進めている。それらを通して非対称分裂に特徴的な膜脂質配向性ならびに膜物性の変化の特定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、膜リン脂質の配向性変化の観察法ならびに膜物性の評価法それぞれの構築を完了した。これらの実験技術は、本研究計画全体を通して軸となるものであり、次年度以降に予定している計画も速やかに進行することが期待できるだけでなく、今後様々な細胞現象における細胞膜の機能を検証する上でも非常に有用である。 以上の進捗状況から、当初の計画を基に研究が概ね順調に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・上記脂質プローブ群およびFlipper-TRを用いたex vivo解析を、筋衛星細胞の単離からの日数ごとに実施する。この際、細胞質分裂時に分断が生じる部位である分裂溝・中央体に特に着目する。これらにより、非対称分裂に特徴的な膜脂質配向性ならびに膜物性の変化を特定する。さらに、脂質結合分子による膜リン脂質配向性への干渉や微小ニードル等を用いた膜物性の操作が非対称分裂に与える影響を解析する。この際、NotchやmTORといった幹細胞性維持や細胞増殖における重要性が知られる細胞内シグナル伝達経路への影響を併せて解析することにより、膜脂質の動態・物性による非対称分裂の制御メカニズムを明らかにする。 ・磁気活性化セルソーティングによる簡便かつ効率の良い細胞単離手法を構築するとともに、分裂溝・中央体の生化学的分画、並びに当該画分の脂質組成分析法を確立する(Cell 2014)。分裂溝・中央体への集積を同定した脂質分子群の薬理的摂動が単離筋衛星細胞の分裂過程に与える影響を解析し、膜リン脂質がその配向性に留まらず組成全体として如何に非対称分裂の制御に関与するかを検証する。
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Research Products
(5 results)