2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K14206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 賢司 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50908308)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 表皮細胞 / 不均一性 / 植物発生 / 遺伝子発現制御 / 転写後調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物体の表層は表皮によって覆われている。表皮は,植物個体内部を保護するほか,植物個体と外部環境の間の物質交換を担う多機能組織である。こうした多機能性は,複数種類の異質な表皮細胞が適切に組み合わさることによって,初めて発揮される。複数の表皮細胞種はどれも原表皮細胞と呼ばれる同一の細胞種から分化する。しかし,表皮の発生過程でどのように原表皮から複数の表皮細胞種が分化するのかについて,その分子機構は明らかではない。本研究では,表皮において複数の表皮細胞の分化が適切に制御される機構を分子的に明らかにすることを目指す。特に,表皮細胞の性質を決定する転写因子ATML1の発現強度が,各原表皮細胞間でランダムにばらつき,それによって原表皮細胞の細胞分裂特性や分化運命が変化することに着目して研究を行う。 2023年度は葉の発生過程において原表皮細胞から表皮細胞が分化する発生時間軸の詳細な解析を行い,原表皮細胞から表皮細胞の分化が開始される発生段階を同定した。こうした時間軸の情報を基に,ATML1の下流に存在する細胞周期関連因子の候補を複数同定した。2024年度はこれら因子の解析を詳細に行う予定である。また,ATML1について,各原表皮細胞間での発現のばらつきを発生させるのに必要だと考えられる重要な遺伝子領域の候補を得た。そこで,2024年度はこの遺伝子領域について様々な観点から解析を深化させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉の発生過程に沿った表皮細胞分化過程の発生時間軸の解析を基に,いくつかの重要因子候補を同定することが出来た。また,ATML1について,各原表皮細胞間での発現のばらつきを発生させるのに必要だと考えられる重要な遺伝子領域の候補を得た。こうした結果を基に,今後の研究展開の見通しが立てられたため,順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
ATML1の下流候補因子として同定された遺伝子の変異体や過剰発現体の解析を進めるとともに,ATML1とのエピスタシス解析を行うことで,ATML1と細胞周期関連因子の関係性を遺伝学的に明らかにする。また,もう一つの重要な課題であるATML1の発現強度が原表皮細胞間でバラつきを示すメカニズムの解明に向けて,上述した遺伝子領域を欠失させた植物の系統などを作出し,その機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗により余剰が生じた。2024年度はトランスクリプトーム解析を行う予定であり,その費用に充当する予定である。
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