2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K14220
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樋口 真之輔 神戸大学, 附属学校部, 附属中等教育学校教諭 (20847131)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 平衡胞 / 平衡石 / 平衡感覚器 / 無腸動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物は一般に、体の回転や重力の方向といった平衡感覚を内耳で受容する。内耳とは、外界から隔離された膜迷路と呼ばれる腔の各所に有毛細胞が配置された構造である。一方、脊椎動物以外の左右相称動物は内耳と呼べるような構造をもたないものの、有毛細胞は多くの左右相称動物に見出される。すなわち、動物の進化において「検出器」である有毛細胞がまず獲得され、これを「容器」である膜迷路に配置することで、平衡感覚を担う内耳が獲得されたと考えられる。 これまでの研究により、脊椎動物の一系統である円口類の内耳膜迷路に着目し、進化発生学的な手法により脊椎動物の平衡感覚器における「容器」の進化についての新たなシナリオを提示されてきた。しかし、そもそも左右相称動物の共通祖先から脊椎動物へと至る進化史における「容器」の獲得過程や、そこに「検出器」がどのように存在していたかについては未解決の問題である。そこで、本研究は左右相称動物の共通祖先から初期に分岐したとされる動物群の無腸動物を用いて、動物の平衡感覚を担う感覚器の初期進化の推定を目的とする。 本年度はまず、平衡感覚器の「容器」となる上皮性の構造が発生時に胚体に形成されるメカニズムについて探究し、次年度も継続する。さらには、得られた結果の検証と並行し、「検出器」である有毛細胞が分化して配置されるメカニズムを推定するために、in situ hybridizationによる解析を実施する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平衡感覚器の「容器」となる上皮性の構造が発生時に胚体に形成されるメカニズムについて形態学的に記述するための実験を計画しており、概ね必要なデータを収集できたため、全体としては「概ね順調に進展している」といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、平衡感覚器の「容器」となる上皮性の構造が発生時に胚体に形成されるメカニズムについて形態学的なデータが得られつつあるので、さらに「検出器」である有毛細胞が分化して配置されるメカニズムを推定するために、in situ hybridizationによる解析を実施する。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた形態学的実験のデータ取得が順調に進展したために、結果として消耗品費が抑制されたため。一方で、次年度には有毛細胞が分化して配置されるメカニズムを推定するために、in situ hybridizationのような分子生物学的手法により遺伝子発現・形態学的解析の両方を行う予定であり、全体としては当初に計画した予算規模で研究を行う。
|